80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.6

 

松尾一彦(作曲家)

オフコースといえばまず小田和正、そして鈴木康博となるわけですが、松尾一彦も実は他のアーテイストへの曲の提供を行っていて、それがなかなかメロディアスな良い曲を作っているのですよね。大ヒットがないのであまり印象は薄いのかもしれませんが、個人的には好きな作曲家の一人です。女性アイドルに多く曲を書いています。作詞家との組み合わせでは、秋元康作詞というパターンが結構多いです。

 

松尾一彦作曲作・ベスト10

★=80年代発売

 

10位 太陽は知っている 柏原芳恵  

(10位 5.9万枚 作詞 松井五郎 作曲 松尾一彦 1985年)

柏原芳恵のシングルは2曲関わっていて、そのうちの2曲目がこれ。曲調はだいぶ違っていて、この作品はテンポが速めで、大人の歌といった趣。柏原芳恵がいろいろと模索していて、曲ごとにいろいろ試しているようなそんな時期で、その中で試しに歌ったみた感はあります。

 

9位 涙のクレッシェンド 伊藤つかさ 

(28位 2.4万枚 作詞 秋元康 作曲 松尾一彦 1984年)

決して曲はわるくないのですが、いかんせん歌唱力がついてきません。本人の人気も下降線にある状態で、あまり知られる機会のなかった作品ではあります。

 

8位 胸さわぎ 岩崎宏美

(25位 8.3万枚 作詞 松尾一彦 作曲 松尾一彦 1981年)

作詞も松尾一彦が手掛けているという貴重な作品。岩崎宏美としてはやや低調期にある曲ですが、それでもある程度の枚数を残しているところは、当時のアーティストパワーに因るところが大きそう。予想を外されるメロディラインで、ちょっと癖のある印象の楽曲です。

 

7位 蒼いピアニシモ 佐野量子 

(72位 1.4万枚 作詞 秋元康 作曲 松尾一彦 1985年)

佐野量子の2ndシングルです。当時としてもどこか懐かしさを感じさせるようなメロディーラインが、佐野量子の清楚で素朴なキャラクターに合っています。知名度も露出もそこそこでルックスもアイドルらしい彼女でしたが、歌はあまり売れなかったのは不思議ではありますが、この曲も含めて路線として地味だったかなという気はしますね。

 

6位 センターラインが終わるとき 勇直子 

(32位 2.5万枚 作詞 秋元康 作曲 松尾一彦 1986年)

テレビドラマにも出演し、このデビュー曲もラジオでガンガンかけられていたのを思い出します。イメージとしてはドラマもひきずって、どちらかというと大人ぶっているツッパリ系。この曲もそんな彼女に合わせた曲調になっていて、サビが特に強く残っています。松尾一彦自身のイメージとはちょっと違う感じなのが面白いです。

 

5位 夢からさめない 佐野量子 

(49位 1.0万枚 作詞 秋元康 作曲 松尾一彦 1987年)

佐野量子のシングルでは『蒼いピアニシモ』『雨のカテドラル』に続き3作目の提供となります。その中ではこの曲が一番好きで、松尾一彦らしく、派手ではないけれど切なげないいメロディーになっています。いい曲なのですけれどね、なかなか売れませんでした。

 

4位 ナーバスにならないで 勇直子 

(46位 1.2万枚 作詞 秋元康 作曲 松尾一彦 1986年)

勇直子に対してはデビュー曲に続いての2作連続の曲提供となっています。路線としては前作と同じ路線を継承していますが、個人的にはこちらの方が気に入っています。特にBメロのけだるい感じが好きで、歌い方もなんか良いです。

 

3位 雨のリグレット 稲垣潤一  

(65位 3.7万枚 作詞 湯川れい子 作曲 松尾一彦 1982年)

稲垣潤一のデビュー曲で、この次の『ドラマティック・レイン』のヒットで知れ渡る前の作品。なぜか2作続いての雨唄ですが、これがなかなかの良曲なのです。稲垣潤一の独特の声質に松尾一彦のメロディーがマッチして、「雨」というのにも関わらずどこか乾いた都会の空気感が伝わってくるのです。売れた後にこの曲だったら、こちらももっと売れていたように思います。

 

2位 ひとりぼっちは嫌い 高橋美枝

(圏外 作詞 松本隆 作曲 松尾一彦 1983年)

NHKのサンデーズの一員として期待されたのですが、アイドルとしては残念ながら売れなかった高橋美枝のデビュー曲です。ただこれがまたいい曲なのですよね。歌もそこそこ上手でしたし、作詞も松本隆と力がはいっていましたし、もっと売れて然るべき作品だったと思っています。派手ではないけれど切なげなメロディーというのがこの作品にも当てはまっていて、松尾一彦らしい一曲だとも思っています。

 

1位 夏模様 柏原芳恵 

(8位 15.9万枚 作詞 微美杏里 作曲 松尾一彦 1983年)

松尾一彦の提供曲の中で、一番売れた作品です。当時人気上昇中のアイドルへの提供でしたから、ある程度の売上は見込めた曲ではあるでしょう。柏原芳恵の代表曲という範疇には入ってこない作品かもしれませんが、私はこの曲が一番好きです。過ぎ去った夏の恋を忘れられない気持ちを歌った悲しい曲ですが、こちらも松尾一彦の最も得意とするタイプのメロディーではないでしょうか。