80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.5
真名杏樹(作詞家)
多くの作詞家作曲家がそうであるように、彼女も最初は自身が歌手デビューを果たしています。ただ同時に音楽制作の方の仕事もしていたようで、次第に作詞家としての仕事が中心になっていたということです。1980年代終盤から1990年代前半に特に多くのヒット曲を輩出しています。
真名杏樹作詞曲・ベスト10
★=80年代発売
10位 砂の男 少年隊
(14位 4.9万枚 作詞 真名杏樹 作曲 羽場仁志 1990年)
少年隊にとっては初めてオリコントップ10に入れなかった曲ということで、作詞家としてはちょっと残念な結果です。光り輝く大都会の夜の中の男女の一瞬を描いた歌詞です。あまり感情的な熱さを感じないクールな歌詞に仕上がっています。
9位 サヨナラを言わせないで 立花理佐
(4位 4.3万枚 作詞 真名杏樹 作曲 久石譲 1987年)★
立花理佐4thシングルです。3rdで一旦路線を変更した後、また元の路線に戻った感じで、早熟なツッパリ系の女の子を歌っています。歌詞的にはサビのところで使っているRed、Blue、Blackといった3色がポイントでしょう。
8位 KODO-鼓動- 織田裕二
(10位 10.8万枚 作詞 真名杏樹 作曲 都志見隆 1992年)
織田裕二への作詞はどれも一貫していて、同じ世界で統一されています。都会の中で迷いもがきながらも日々を精一杯生きる若者たちを描いていて、今作も「自動販売機にコイン」「野球場の上に光るペガサス」「ビルとビルのすきま」などの具体的な描写があることで、より心情が響いてきやすくなっています。
7位 悲しみよこんにちは 高岡早紀
(15位 2.4万枚 作詞 真名杏樹 作曲 加藤和彦 1989年)★
歌手高岡早紀にはデビューから3曲続けて歌詞を提供した真名杏樹。こちらは3rdシングルになります。まだまだ今のような大人の女性のイメージではなかった高岡早紀ですが、どこか不思議なイメージはあったのでしょう。青い鳥や泉が出てきたりと、童話のような世界観の楽曲になっています。
6位 TOKYOかくれんぼ 坂本冬美
(81位 0.7万枚 作詞 真名杏樹 作曲 三木たかし 1996年)
歌うのは演歌歌手坂本冬美ですが、楽曲は演歌ではないですね、これは。歌詞もあまり演歌的ではないです。東京の深夜を舞台に、バスに乗って旅立つ恋人との別れを描いた失恋ソングといったところで、オーソドックスですが、心情がストレートに伝わる分かりやすい詩になっているのではないでしょうか。
5位 眠れぬ森の美女 高岡早紀
(21位 2.8万枚 作詞 真名杏樹 作曲 加藤和彦 1988年)★
『悲しみよこんにちは』と同様に、これもおとぎ話の世界です。高岡早紀については、この世界観でまずは行くということだったのでしょうね。《胸の谷間へとすべる雪》《髪に巻きつけた星のショール》とどこかの国の妖艶なお姫様的なイメージが、この時すでに出来上がっていたのですね。
4位 キミはどんとくらい 立花理佐
(3位 4.1万枚 作詞 真名杏樹 作曲 山川恵津子 1987年)★
この歌詞なんかは職業作詞家らしさがかなり出ているように思います。アイドルとして売り出し中の立花理佐に対して、1stシングル、2ndシングルのツッパリ的なイメージから一転、コミカルで可愛らしい楽曲を用意してきたわけです。そしてなんといっても「Don’t Cry」じゃなくて「どんとくらい」なんですよね。ひらがなにするだけで印象が全然違ってくるのです。もっとも最初は「ドンと暗い」なのかと思ったりもしましたが…。
3位 現在、この瞬間から 織田裕二
(3位 20.7万枚 作詞 真名杏樹 作曲 都志見隆 1991年)
織田裕二のシングル曲にはたくさん歌詞を提供していますが、この曲もその一つ。昔の彼女を偶然街角で見かけて、いろいろとあの頃のことがよぎってくるわけですが、結局声をかけずにやり過ごしたという、ちょっと切ない感じの歌詞がいいです。この前作『歌えなかったラヴ・ソング』からの続きにも思えて、この世界観は好きです。
2位 夏の短編 渡辺満里奈
(8位 3.5万枚 作詞 真名杏樹 作曲 岸正之 1988年)★
印象的な言葉を駆使した楽曲で勝負していたライバル美奈代に対し、歌詞の描く物語性とか映像性を重視していた満里奈。この曲はあなたへの思いを綴った言葉の中に、海の青と小説本の表紙の青が映像として浮かんできて、いかにも満里奈的な楽曲といえるでしょう。
1位 歌えなかったラヴ・ソング 織田裕二
(2位 57.5万枚 作詞 真名杏樹 作曲 都志見隆 1991年)
織田裕二最大のヒット曲。「最終日のゼミ」「卒業までの日々」「就職のコネクション」といった言葉の中に、大学4年生が抱える、学生時代の終焉を迎え社会に出る前の寂しさと不安のようなものが伝わってきます。《90年代(ナインティーズ)のラヴ・ソングを贈ろう》なんて、90年代初頭に歌っているわけなんですよね。感傷的な気持ちになる歌詞で好きです。