80年代音楽界を彩った作詞家作曲家たち vol.2

 

宮下智(作詞・作曲家)

作詞も作曲もこなすけれど自らは歌わないという異色の女性作家で、基本的にはジャニーズ中心に楽曲を提供していました。その中でも田原俊彦との関係が濃密でした。またその後の経歴も異色で、音楽界から身を引いて、なんとショコラティエに転身。そんな中突如、King&Princeへの楽曲提供で復活。そんな宮下智のランキングは当然田原俊彦中心です。

 

 

宮下智作詞・作曲ベスト10

★=80年代発売

 

番外 愛のすべて King&Prince

 (作詞・作曲 宮下智 2018年) 

キンプリ2ndシングルの収録曲ということで番外にしましたが、長年沈黙していた作詞作曲家としての宮下智が、突発的に復活したのがこの曲なのです。どういう経緯があったのかわかりませんが、健在ぶりを示したわけです。

 

10位 “さようなら”からはじめよう 田原俊彦 

(4位 7.1万枚 作詞 宮下智 作曲 筒美京平 1987年) 

トシちゃんの中では地味な曲で、宮下智が関わったトシちゃんのシングルではこれが最後になります。作詞のみということですが、かつてのインパクトの強い歌詞ではなく、大人の落ち着いた田原俊彦を表現したものになっていて、印象は薄いです。

 

9位 キミに決定! 田原俊彦 

(2位 33.8万枚 作詞・作曲 宮下智 1981年)  

トシちゃん特有のはっちゃけソングですが、その多くに宮下智が携わっていて、この曲は作詞・作曲の両方を手掛けています。まあ、らしいといえばらしいのですが、前作4thシングルに比べると、インパクトに負ける感じがします。とはいっても、当時の田原俊彦しか歌えない能天気さを上手に引き出せるのは、宮下智しかいなかったのでしょう。

 

8位 What’s your name? 少年隊 

(1位 22.2万枚 作詞 宮下智 作曲 Jimmy Johnson 1988年)

田原俊彦以外では少年隊にも楽曲提供を行っていて、シングルも2作ほど関わっています。もっとも少年隊ですから、田原俊彦のようなおちゃらけ路線でというわけではなく、少年隊には少年隊らしい作品に仕上げています。曲はかっこよくて好きなのですが、宮下智は詞のみということで、ランクはこの位置。夏らしいギラギラした感じの歌詞にはなっています。

 

7位 ハッとして!Good 田原俊彦 

(1位 62.2万枚 作詞・作曲 宮下智 1980年) ★

田原俊彦の2ndシングルということで、デビュー曲『哀愁でいと』がカバー曲だっただけに、トシちゃん初めてのオリジナル和製シングルを任せられたのが宮下智だったのですね。作品は前作とはまったく違った雰囲気に仕上がって、初期の田原俊彦の路線を決定づけるような役割を果たしました。

 

6位 NINJIN娘 田原俊彦 

(2位 35.5万枚 作詞・作曲 宮下智 1982年) 

まさに田原俊彦しか歌えない田原俊彦のための歌。これがトシちゃんの新曲ですと、初めて聴いた時の衝撃といったら…。とんでもない曲をぶちこんできたなという、よくこんな曲を歌うなあと。それを作っちゃうのが宮下智なのですよね。《一本でもニンジン ニンジン》《白けりゃダイコン ダイコン》《黒けりゃ ゴボー ゴボー》なんて歌詞、書けますか、普通。

 

5位 誘惑スレスレ 田原俊彦 

(1位 38.3万枚 作詞 宮下智 作曲 網倉一也 1982年)

顔で売っているアイドル田原俊彦に《男は顔じゃないよハートさ》と歌わせてしまう宮下智。とにかく田原俊彦の歌に関しては徹底的に遊びを入れてきていた印象で、10位のような落ち着いた歌詞があると、かえってどうしたの?って感じになってしまうぐらいでした。《さぁ一丁手を打ちゃ決まりさ 真剣なオレ やったぜよろしく》って、恐れ入ります。

 

4位 まいったネ 今夜 少年隊 

(1位 19.9万枚 作詞・作曲 宮下智 1989年)

少年隊にもう一曲提供しているのがこの曲で、こちらは作曲も担当しています。一連の田原俊彦への楽曲とはまったく雰囲気が違って、大人の雰囲気のスウィング・ジャズ風の楽曲になっていて、実は宮下智の引き出しが広いことを認識されられた一曲となっています。この歌に少年隊のダンスが加わると、まるでミュージカルのような雰囲気にもなって、いい感じに。

 

3位 原宿キッス 田原俊彦 

(1位 40.6万枚 作詞 宮下智 作曲 筒美京平 1982年) 

作詞だけの作品ですが、これまた田原俊彦ならではの宮下智節全快といったインパクトの強い歌詞です。この歌は、いってしまえばナンパの歌です。ポニーテールに赤いリボン、すけるほど薄いシャツ、スカートをつまんで原宿を闊歩する刺激的なあの娘に対し、待ち伏せしてお茶に誘い、後をつけて好きだと言い、だめなら肩を抱いて唇を奪おうという、よくよく読んでみるととんでもない歌詞なのですが、《恋し恥ずかし原宿キッス》の言葉で、まるく包んでしまうのですよね。恐るべし宮下智。

 

2位 チャールストンにはまだ早い 田原俊彦 

(2位 30.8万枚 作詞・作曲 宮下智 1984年)  

間奏での田原俊彦のダンスがひとつの見せ場となっているダンスナンバーですが、改めて考えると4位の『まいったネ 今夜』に通ずるものがある楽曲となっています。最新の音楽というよりも、古き良き時代の音楽のエッセンスを取り込んで、アイドルのダンスナンバーに仕上げているということで、もしかすると宮下智のひとつの得意技だったのかもしれません。特にサビの部分の歌詞も小気味よくて、それまでの能天気ぱっぱら路線とは一味違うトシちゃんソングに仕上がっていました。

 

1位 ブギ浮ぎI LOVE YOU 田原俊彦 

(2位 48.7万枚 作詞・作曲 宮下智 1981年) 

田原俊彦&宮下智の能天気ソングの中でも、最もぱっぱらばー度合いが高く、どこかにいってしまってるのがこの曲。何せ《毎日が楽しくて笑うしかない アハハハハー バカだね》ですからね。ただ詞ばかりが注目されそうなのですが、ウキウキ感いっぱいのこのメロディーがかなり良くできていて、歌っているととにかく楽しい楽しい。イントロを聴いているだけでも、何か楽しそうなことが始まりそうでワクワクするのです。迷うことなく宮下智の作品の中での最高傑作でしょう、と私は思うのですが…。