80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.359
琥珀色の想い出 あみん
作詞 岡村孝子
作曲 岡村孝子
編曲 萩田光雄
発売 1982年12月
大ヒット『待つわ』の影に隠れがちながら、穏やかな陽だまりにつつまれるようなあみんらしさが表現された名曲
ヤマハポプコンを経て1982年7月『待つわ』でデビューした女性デュオあみん。作詞作曲を行い、後にソロアーティストとしても活躍する岡村孝子と、同じ女子大で知り合った加藤晴子。男性デュオや男女デュオは70年代80年代とたくさん登場(男性デュオ=雅夢、チャゲ&飛鳥、ビリーバンバン、グレープ、H2O、風… 男女デュオ=紙ふうせん、チェリッシュ、ダ・カーポ、ヒデ&ロザンナ…)し、ヒット曲も多く生み出されていましたが、女性デュオってピンクレディみたいなアイドル系以外は実はあまりいなかったのですよね。そういう意味では目新しさがまだあったというのもあるでしょうが、なんといっても『待つわ』で描かれた執念深い若い女性の心情みたいものが受けて、社会的にも影響を与えるほどの大ヒット、ミリオンセラーになったのです。
今回とりあげた『琥珀色の想い出』はその『待つわ』の次の2ndシングルとしてリリースされたのですが、当然ミリオンセラーの次ということで、注目されたはずです。私も当然注目していましたし、初めて聴いた時は、なかなか良い曲ができたじゃないかと思ったものです。路線としては『待つわ』ほど情念的な歌ではなく、むしろせつない内容ながらも穏やかで温かさを感じる作品でして、個人的には『琥珀色の想い出』の方がずっと好みではありました。ただ世間一般的には、もしかすると物足りなさはあったのかもしれません。それでもオリコン最高9位、売上17.4万枚と、これ単独でみればまずまずのヒットといえる実績は残しています。前作の数字があまりに大きかったので、それと比べると大幅ダウン的な感じで見られてしまうのかもしれませんが、あみんは一発屋ではないよ、二発目もあったんだよということはちょっと主張したいところではあります。
さて『琥珀色の想い出』は前作に引き続き作詞作曲は岡村孝子。簡単に言ってしまえば、終わった恋を振り返って懐かしむ歌で、歌詞もシンプル、曲もシンブル、それでもとても心地の良い楽曲に仕上がっているのですよね。冬に発売された曲ですが、歌詞にも《西陽のさす小さな部屋》とあるように、穏やかな陽気の午後に、ふと楽しかった日々を思い出して懐かしむ、そんな感じを簡単に想像できるように、七局が彼女たちのボーカルにマッチしているのです。
《小さな風の精たちが吹き抜ける時の扉》
《木々のざわめきの中で 蒼い芽が産声あげる》
冒頭のこのフレーズがメルヘンチックで、いきなり歌の世界に引き込んでくれます。そして
《あなたはもういないけど ふたりで歩いた小径は》
《遠い日に心誘って》
《なつかしい風の声に ふと瞳を閉じてみると 素敵な琥珀の想い出が手を振る》
と「あなた」がもう遠い過去の想い出になっていることが明かされていくのです。
《あの時二人で未来(あした)へ旅立つことができたなら
こんなさみしさを胸に 残しはしなかったのに》
と、少々悔いが残っているようなところもこのあたりで伝わってきます。
《アルバムに写る二人は 色あせてしまうけど 素敵な琥珀の想い出はいつまでも》
彼女にとっては良い想い出だったのでしょうね、このあたりはちょっと切ないです。過去の想い出として消化はできていても、出来たらもう一度あの頃に戻ってみたいな的な感じでしょうか。
いい曲なのですけれど、ちょっと地味なのでしょうかね。ただ後の岡村孝子のソロ曲ともちょっと違う印象で、若さ頃だからこその作品という感じがするのですけどね。で、結局このあと2曲のシングルを出してあみんは解散し、岡村孝子のソロ活動へと移っていくわけで、『待つわ』だけじゃないあみんにもう少しスポットが当たってほしかったと時々思い返したりします。