80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.347

 

紅  X

作詞 YOSHIKI

作曲 YOSHIKI

編曲 X

発売 1989年9月

 

 

後に日本を代表する存在にのし上がるビジュアル系の先駆者的バンド、彼らが世に知られることになった甲子園定番曲

 

 のちのX JAPAN、当時はXでしたが、その存在が一般に知られるきっかけとなったのが今回取り上げた『紅』です。当時はまだビジュアル系という言葉はなかったですが、あとになってその元祖的な位置に置かれるようになったのが、BUCK-TICKとこのXになるでしょう。バンドブームの真っ只中ということで、また派手なバンドが出て来たなぐらいにしか当時は思いませんでしたし、ましてや日本を代表するようなカリスマ性を備えたバンドになるとは、まったく想像しなかったです。当時派手なファッションやメイクで演奏するバンドはいろいろ出てきましたが、そのイメージしてはヘビメタかハードロックというイメージが根強くあって、Xもまたその流れの中の1バンドなのだろうとしか思わなかったですね。

 

 そんな中で発売した『紅』は、発売と同時にオリコンのシングルチャートの5位に突然登場してきたのです。『紅』はXの3枚目のシングルですが、メジャーからは最初のシングルになり、オリコントップ100に登場するのも初めて。当時の私には突然知らないバンドが出て来たなという印象でしたが、実際にはアルバム「BLUE BLOOD」からのシングルカットで、先行してアルバムが売れていたのですね。アルバムのヒットで少しずつ知名度を広げ、どんなものかとシングル『紅』に多くの人が興味を持って手を伸ばしたといったところでしょうか。

 

 この歌は最初、スローなロックバラード調で始まりますが、少し経過したところで突如ハードに転換していくというトリッキーな展開を見せ、まずはその意外性に引き込まれます。加えて迫力のあるボーカルと、尖がった見てくれ、当時から存在感は抜群でした。また当時のこの手のバンドはかっこつけてテレビなどのメジャーのメディアには出ないという姿勢を貫くバンドが多かった中で、わりと気にせずにテレビにも出たりしていたので、近寄りがたさだけではなく、一方で親しみやすさを感じる部分もあったのでしょう。

 

 そんな『紅』ですが、甲子園でブラスバントがよく演奏する応援歌としても有名で、今もなお毎年のように高校野球の試合の放送を観ていると必ずといっていいほど聴くことができます。この歌がどうして甲子園の応援歌として定着したのか、そのあたりはよくわかりません。例えば野球に関係ある『サウスポー』とか『タッチ』とかはよく分かるのですが、『紅』は野球には関係ないし、応援歌的でもないのですよね。出だしの箇所も原曲ではスローなところから始まりますし。ただ歌詞を部分的に拾っていくと、確かに勢いを感じる言葉が使われています。

《嵐吹くこの街》

《吹き抜ける風》

《お前は走り出す 何かに追われるよう》

このあたりの言葉から感じられる疾走感が応援歌に相応しいとして採用されたのでしょうか。かつては♪走るー走るーの『Runner』もよく演奏されていますし、「走る」というワードは野球の応援歌に使われやすいのかもしれません。

 

 いずれにせよ、このメジャーデビュー曲が、今もX JAPANの代表曲の一つとなっているわけで、彼らがビッグになるためには、大きな意味を持つ曲であることには違いないでしょう。続く『Endless Rain』(1989年12月)、90年代に入って『Say Anything』(1991年12月)、初めてオリコン1位となる『Rusty Nail』(1994年7月)、『Forever Love』(1996年7月)といった代表曲を次々に送り出し、日本を代表するバンドにと成り上がっていくのです。ただその後に訪れる数々のショッキングな出来事により、波乱万丈の展開が待っていることになるのですが、それでもなおカリスマ性を持ち合わせたバンドとして今X JAPANが存在しているということ、そして常に良くも悪くも話題を提供してくれること、そんな唯一無二のバンドであり続けていることはやはり凄いことだは思います。