80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.344
Friend 安全地帯
作詞 松井五郎
作曲 玉置浩二
編曲 安全地帯、星勝
発売 1986年10月
派手さはなくセールス的にはいまいちだったものの、じわじわとボディブローのように体に染み入る安全地帯の名バラード
1983年11月に発売した4thシングル『ワインレッドの心』で彗星のように日本の音楽界に現れ、以後1988年の活動休止までの間、ヒット曲を連発した80年代を代表するバンドのひとつが安全地帯です。最初に安全地帯という名前を聞いたとき、そのバンド名がとても新鮮でカッコよく感じられたのを覚えています。当時バンドといえばカタカナかアルファベットを使った外来語ベースの名前がほとんどの中、ひらがな混じりのフォーク系グループ(青い三角定規とか赤い鳥とか)だったり、漢字だけの名前のフォーク・歌謡曲系デュオ(狩人とか雅夢とか)などはいましたが 漢字だけで作られたバンド名というのが、珍しく感じられたのでした。その後もそんなに多くはなく、筋肉少女帯、東京事変、怒髪天、緑黄色社会、氣志團などやバンドとはいえないかもしれないけれど黒夢とか、そのぐらいでしょうかね。
安全地帯といえばなんといっても玉置浩二が圧倒的に目立つわけで、一般的にはワンマンバンドにみえるでしょう。作曲もボーカルもおしゃべりも広報(?)もそのすべてが玉置浩二が中心。他のメンバーは実力を評価されながらも控えめな性格なのか、前面にほとんど出てきません。という部分で、実際玉置浩二一人のキャラクター、抜群の歌唱力、作曲力でヒット曲連発のバンドに持って行ったといっても間違いではないように思います。そんな玉置浩二率いる安全地帯の数多くのシングル曲の中から、今回選んだのが1986年の13thシングル『Friend』というわけです。
『ワインレッドの心』以降の安全地帯ですが、アルバムからのシングルカット2曲を挟んだ7thシングル『恋の予感』(1984年10月)の大ヒットで、一発屋ではない実力派人気バンドの地位を確立、以後は出す曲出す曲をオリコントップ10に送り込み、ランキング番組常連になっていきます。しかしながら一通りの引き出しを開けてしまったのか、売上的にはそろそろ下降し始めてきたのが1986年頃。その1986年の秋にリリースしたのが『Friend』で、実際この曲はオリコン最高7位、売上14.7万枚と、それまでに比べると実績は明確に落ちています。ではこの曲があまりいい曲ではなかったのかというと、とんでもないです、ということを言いたかったのです。
確かに一回聴いておっと言わせる派手さはありません。それまでにヒットしたバラード系の曲よりもさらにゆっくりじっくりした展開で、言葉数もかなり少ないです。ただこの曲は、聴けば聴くほど味わいがあって、むせび泣くような玉置浩二のボーカルに気づかないうちに感情移入してしまうような不思議な魔力があるのです。
歌詞の内容はというと、ともに暮らす恋人同士だった関係が終わって、今この瞬間からFriend、つまり友達関係になってしまう切なさ悲しさを綴ったものになっています。
《もうFriend 心からFriend みつめてもFriend 悲しくなる》
《もうFriend きれいだよFriend このままでFriend やさしく》
《もうFriend 心からFriend いつまでもFriend 今日からFriend》
あまりに切ないではありませんか!もう今日からは友達、心から見つめたところで友達、このままずっと友達と観念しながらも、その友達に対して「きれいだよ」なんて言ってしまうのですよ! このせつない感情に聴いていてとっても心が揺さぶられるのですよね。そしてそれを見事に表現する玉置浩二のボーカル。安全地帯の曲の中ではあまりスポットの当たることが少ない曲なのかもしれませんが、名曲だと私は思っています。
この後、安全地帯としては全盛期の勢いを取り戻すことなく活動休止に至り、玉置浩二はソロ活動に重心を置くようになっていきます。その中でも『田園』のような大ヒット曲をまた放っていくわけですから、やはりその才能はさすがというしかありません。そして2022年度、安全地帯として紅白でその雄姿を見せるなど、バンドとしても活動を続けているというところは、ファンにとっては嬉しい限りではないでしょうか。
最後に、安全地帯のシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。
1 Friend ★
2 真夜中すぎの恋 ★
3 月に濡れたふたり ★
4 ワインレッドの心 ★
5 I Love You からはじめよう ★
6 悲しみにさよなら ★
7 恋の予感 ★
8 Juliet ★
9 じれったい ★
10 微笑みに乾杯 ★
★=80年代発売