80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.339

 

ライオンは起きている  朝倉紀幸&GANG

日本語詞  佐藤ありす

作詞・作曲 H.Peletti、L.Creatore、G.Weiss、A.Stanton

編曲 渡辺敬之

発売 1982年6月

 

 

ビートたけし主演のドラマの主題歌に起用されてスマッシュヒット、洋楽ヒットナンバーを敢えて逆の意味の邦題をつけた洒落のきいたカバー曲

 

 のちに作曲家に転向する朝倉紀幸ですが、朝倉紀幸&GANGのボーカリストとして1982年6月『ライオンは起きている』でデビューを果たします。そしてこの『ライオンは起きている』はオリコン最高18位、売上14.4万というスマッシュヒットとなったと同時に、彼らにとって唯一のオリコンランキングのトップ100に入った曲にもなったわけです。ということは、いわゆる一発屋ということなのですが、この曲がどうして売れたかというと、ビートたけし主演のテレビドラマ『刑事ヨロシク』の主題歌に起用されたということが、やはり一番の要因でしょう。もっとも刑事ドラマと言っても、本格的な犯罪ものではなく、完全にコメディ作品で、パロディとかギャグに終始しているようなそんなドラマでした。それでも主題歌に起用されるということは、当時は今以上に大きな効果があって、その恩恵を受けてヒットに結びついたのでした。

 

 ただ冒頭で述べたように、後に作曲家(代表的な曲はCoCoの『夢だけ見てる』『夏空のDreamer』、大西結花『哀しみのシャングリラ』あたりでしょう)として活躍する朝倉紀幸ではありましたが、この『ライオンは起きている』は洋楽のカバー曲で、自ら作曲したものではありません。ただドラマだけでなく、ある意味この曲もパロディ的な要素があるカバーでして、原曲のタイトルは『THE LION SLEEPS TONIGHT』、邦題で『ライオンは寝ている』なのです。それをまったく逆の『ライオンは起きている』に変えて、そこに日本語の歌詞をのせたている上、曲の雰囲気もどこか牧歌的でゆったりと「寝ている」感じから、激しく「起きている」に大胆にアレンジしているのですから、この曲自体が遊びという感じです。

 

 その日本語詞をつけたのが佐藤ありすなのですが、後に作詞家としてヒット曲を手掛けていく、そのごく初期の作品ということになります。作詞曲としてはZOO『Choo Choo TRAIN』『Gorgeous』『YA-YA-YA』、田原俊彦『堕ちないでマドンナ』、東野純直『君は僕の勇気』などが代表的な作品ですね。その佐藤ありすがつけた日本語詞なのですが、今どきなかなかこの曲の歌詞を確認することがインターネット上でもできないのです。しかもCD化もされていないと聞きます。何か大人の事情のような匂いがぷんぷんとしてきますが、実際のところはどうなのでしょうか。

 

 曲については軽快なロックになっていて、今聴くと古さは感じますが、それが逆にとってもいい味わいにもなっています。『刑事ヨロシク』では、このテーマソングに合わせて、リーゼントやサングラスのツッパリ系ロッカーの風貌をした男たちが曲に合わせて踊る映像が流されるわけですが、それとセットで観ると、この曲がそこそこのヒットになったというのも納得できるような気がします。当時はツッパリブーム、横浜銀蝿、なめ猫(又吉&なめんなよ)、アラジン、嶋大輔、紅麗威甦といったツッパリロックンローラー風の歌手が次々にヒットを飛ばしている時代、そんな流れに乗って作ったようなところもあったのでしょうか。

 

 ただ所詮企画物の域は越えられず、朝倉紀幸&GANGはこれ一曲であっという間にヒット戦線からは姿を消していってしまいました。その後の朝倉紀幸については、冒頭で記したとおりです。