80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.338

 

おねがい天国  大江千里

作詞 大江千里

作曲 大江千里

編曲 清水信之

発売 1989年7月

 

 

それまでとはちょっとイメージを変えた軽薄さが楽しい、じわじわとファンを拡大していきつつあった大江千里の80年代最大のヒット曲

 

 大江千里といえばまずは「童顔眼鏡」というのが最初の印象で、音楽雑誌で始めてみた眼鏡フェイスは、一度観ただけですぐに顔と名前を憶えてしまった記憶があります。若いアーティストはかっこよく見せたいというのがあるのでしょう、サングラス以外の眼鏡をかけて初めから登場するというのはそうないことで、いきなり眼鏡というのは、それだけでも個性的でもありました。さらに歌でも男の弱いところをさらりと歌って、女子大生を中心に若い女性の母性本能を上手にくすぐったのでしょう、80年代後半にじわじわと人気を伸ばしていきました。夏休みにアルバイトしていた先で一緒だった当時女子大生の女の子も、「千里ちゃん」なんて呼んで話題にしていたのを覚えています。

 

 デビューは1983年5月『ワラビーぬぎすてて』でしたが、初めてオリコンチャートに登場したのは6thシングル『十人十色』(1984年11月)で最高が58位、4.9万枚を売り、初期の代表曲のひとつとなっています。その後少しずつ順位を上げていき、11th『Bedtime Stories』(1986年12月)からは着実にトップ20入りを果たすようになり、そして1989年9月発売の17th『ラジオが呼んでいる』で初めて最高9位とトップ10入りを果たしたのです。

 

その中から今回とりあげたのは、80年代の大江千里で最も売上が多かった16thシングル『おねがい天国』(1989年7月)です。この曲は最高11位でしたが、売上は8.4万枚を残しています。ただこの曲は、それまでの大江千里のイメージとはちょっと趣向を変えた印象があって、最初にこれを聴いてときは「おやっ?」と思わされたのを覚えています。どこか繊細で自信なさげな等身大の男の子の歌を歌い続けていた大江千里が、突然ノリノリの浮かれ気分で

《V・A・C・A・T・I・O・N YES!!!》

《南の島じゃベランダで shower shower shower girl》

《夜更けまでダンスして》

《Everyday フィッシュなHIPでcha cha cha》

と歌っているわけですから、びっくりはしましたね。

ただ歌詞をよく読んでみると、自分が南の島で遊んでいるというよりは、第三者的な視点で世の中の彼氏・彼女に対して、いつも相手にべったりでは相手も疲れちゃうよ、たまには解放してあげなよ的なことも歌っていて、そんなに軽薄な歌ではなかったりもします。ただそれまでが全然こんな感じではなかったので、とにかく大江千里的サマー・バケーションソングといったところで、どこか似合わない軽薄さがちょっと面白い曲でした。実際に前後の曲に比べて売れましたしね。これで気を良くしたのか、この路線では翌年に『たわわの果実』(90年4月)なんて曲も出していますしね。

 

さて大江千里は90年代になるとさらに売上を伸ばしていき、『dear』(1990年7月)が最高6位で11.2万枚と初の10万枚越え、『あいたい』(1990年12月)が最高9位で20.6万枚と20万枚越えを果たします。そして最大のヒットとなったのがテレビドラマの主題歌にもなった『格好悪いふられ方』(1991年7月)で、最高2位の50.2万枚という大ヒットとなったのです。これをピークに以後は売上も下降していきますが、映画やテレビドラマにも出演したりと、俳優業にまで活動の場を広げていきました。そして2000年以降はジャズへ転向と、独自の路線を進みながら、今に至っているという感じですね。たまにはテレビなんかで昔のヒット曲を歌って欲しいとも思うのですが…

 

 最後に、大江千里のシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。

1 YOU 

2 これから  

3 十人十色 

4 格好悪いふられ方 

5 daer

6 夏の決心

7 APOLLO

8 リアル 

9 ありがとう

10  おねがい天国 

★=80年代発売