80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.307
Hop・Step・愛(LOVE) 新田純一
作詞 三浦徳子
作曲 武谷光
編曲 松下忠重
発売 1982年4月
マッチに似ているというところが一番の売りの爽やかで甘めの男性アイドル、賞レースなどでもよく歌った心地よいミディアムテンポのデビュー曲
新田純一は1982年4月『Hop・Step・愛(LOVE)』で歌手デビューしますが、実際にはその前年の1981年、当時のアイドル歌手の登竜門的番組NHK『レッツゴーヤング』のレギュラーに抜擢されていて、ある程度顔が知れた状態でのデビューでした。デビュー前年1981年は稀に見る男性ソロの新人アイドルが多く活躍した年で、沖田浩之、堤大二郎、ひかる一平、竹本孝之、そして1980年末デビューながら賞レースの対象としては1981年になる近藤真彦らがデビュー。ジャニーズ以外の男性アイドルが活躍できた最後の時代でもありました。
そんな中でライバルの多い1981年を避けるように、1982年にデビューしたのが新田純一だったのです。1982年デビューのライバルとしては、ソロとしては他に本田恭章がせいぜいいるぐらいでしたが、3人組のシブがき隊が圧倒的に強くて、女性ファンはすべてシブがき隊に持っていかれた感じでしたね。さらにこの年は前年の反動か、女性アイドルが異様に強くて、その中で新田純一が支持を広げていくのには、なかなか厳しい状況だったかもしれません。それでもデビュー曲『Hop・Step・愛(LOVE)』はオリコン最高28位、売上4.6万枚とまずまずの見当を見せたわけです。
新田純一の最大の売りは、マッチこと近藤真彦に似ているという点。これだけで二番煎じ的な立ち位置で、なんとなく突き抜けるのが難しそうな感じにはなってくるのですが、近藤真彦はデビューと同時に完全に突き抜けて異次元にいってしまった存在なので、まあそれも売り方としては「あり」なのでしょうね。実際の新田純一のキャラクターとしては、近藤真彦のヤンチャぶりをそぎ落として、爽やかで甘さのある好青年といった趣でした。『Hop・Step・愛(LOVE)』はそんな新田純一にはぴったりといった印象で、それも相まって、そこそこのヒットに結びついたというのもあるでしょう。
『Hop・Step・愛(LOVE)』の作詞はヒットメイカーの一人である三浦徳子。一方作曲の武谷光は作曲家としてはほぼ無名の存在。他にも作曲家としての活動は若干確認できますが、ヒット曲の提供はありません。ただ『Hop・Step・愛(LOVE)』はアイドルのデビュー曲としての出来栄えはけっして悪くはないです。ミディアムテンポで歌詞も好きな女の子に甘く囁くようなものになっていて、一見何気ないようでちゃんと練られているのですよね。
《おいでここへ 僕のそばへ 一晩中熱い言葉囁きたいんだ》
《恋人っぽくさせておくれ ちょっとの人生》
《背中のボタンをとめる役目もしたいし 心の扉を叩くこともしたい》
《サインを決めては君に電話をしたいし おでこにおやすみキッスなんかしたい》
なんて甘く言われたら、女の子としてはちょっと夢心地になりませんか?
曲のテンポもゆったりとしているので、なんとなく心地よくなります。
《恋して 愛して》
と繰り返されるサビの部分がまたキュートでして、印象にも残りやすかったでしょう。
このように曲にも恵まれて順調なスタートとなった新田純一でしたが、2ndシングル『サマーセクシー』はオリコン最高94位と急激に下降してしまうのです。もはやジャニーズ以外の男性アイドルがチャート上位に入り込む隙が、1982年頃を境になくなってしまっていたのです。前年デビューしていた1981年組も2年目となるこの年は苦戦していますし、以後は一部の異端系(例えばお笑い番組から出た風見慎吾やアーティスト性を兼ね備えた吉川晃司など)を除き、非ジャニーズの男性の純アイドルの系譜は途絶えてしまうわけです。それでも新田純一は俳優として地道に活動を続けているようで、その部分では、この『Hop・Step・愛(LOVE)』の存在は大きな財産となっているのではないでしょうかね。