80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.304
さよならのリフレイン 吉田真里子
作詞 川村真澄
作曲 後藤次利
編曲 後藤次利
発売 1988年9月
実に惜しい資質、お人形さんみたいな美形アイドルとして期待されてデビューしながらはじけきれず。そんな吉田真里子の良くも悪くも正攻法の2ndシングル
吉田真里子は第6回ミスマガジンの特別賞を経て、1988年5月『とまどい』でアイドルとして歌手デビューを果たしました。テレビの音楽番組などでの歌唱の機会にも恵まれ、『とまどい』はオリコン最高14位と、新人としてはまずまずのスタートとなりました。今回取り上げたのはその吉田真里子の2ndシングル『さよならのリフレイン』です。この曲もオリコン最高15位と、トップ20位に食い込む健闘を見せています。このように吉田真里子を結構力を入れて売り出そうという雰囲気というものは十分に感じられましたね。
なんといっても吉田真里子は美形で、よくある例えを使うとお人形さんのような感じでした。とはいっても冷たいクールな美人さんではなくて、可愛らしさも併せもった柔らかい雰囲気もあって、力を入れて売り出そうとするのもよくわかります。外見的な資質は文句なしといったところでした。だからなおさら、その実績には物足りなさは残ります。もしかするとちょっと時代に恵まれなかったのかもしれません。実は1980年代終盤はアイドルブームが陰りを見せ、やがて冬の時代へと向かうそんな時期だったのですね。とはいえ、ヒットチャートの上位は工藤静香、中山美穂、南野陽子、浅香唯らが賑わしていましたし、1988年のデビューしたアイドルをみると、姫乃樹リカ、麻田華子、藤谷美紀、西田ひかる、坂上香織、Wink、中山忍、川越美和と数はそこそこ揃っていました。結果この中から抜け出したのはWinkであり、少し遅れて西田ひかるといったところでした。
吉田真里子はこのようにもっと売れてもおかしくない素材であったと思うのですが、結果としてはデビュー曲の14位がキャリア最高のまま、それ以上にはじけることはなかったのです。ルックスが良ければ売れるというわけではない典型で、吉田真里子に足りなかったのは、はじけるような明るさだったのかもしれません。例えば西田ひかるにあったような…。とはいっても笑わないWinkがトップアイドルになったりもしたので、本当のところはよくわかりませんね。
さて『さよならのリフレイン』ですが、作詞川村真澄、作曲後藤次利という売れっ子作家を起用して、売れ線を狙ったような正攻法で奇をてらわない楽曲といったところでしょうか。ウキウキと明るい曲ではなく、タイトルからしてわかるように、悲しい別れの曲で、吉田真里子のイメージとしては、やはりその方向になるのでしょうね。ただ正攻法とはいいましたが、悪く言えば当たり障りのない感じともいうことができるのですよね。メロディーは悪くないです。売れ線の曲を量産し続けていた後藤次利らしく、耳障りの良いものに出来上がっています。そこに女の子らしい詩が乗っていて、悪くはないのですが、イメージ通り過ぎて、あまりインパクトがないのですよね。
《港を見下ろすベンチ 小さく揺れる木漏れ陽に 何度も胸が痛くなる》
《風はさよならのリフレイン せつなさのメロディー 「どうしてひとりなの」?》
《恋人たちの帰り道 襟を立ててすれ違う》
冬の前の寂しさを感じさせるフレーズが並び、聴いている方も切なくなってくる、そんな楽曲でした。抜群の歌唱力があればこういった曲もきちんと聴かせられるのでしょうが、吉田真里子の歌唱力はそこそこぐらいでしたから、手堅く挑める歌である半面、これでジャンプアップというのはちょっと難しかったかもしれません。
続く3rdシングル『夢を追いかけて』(1989年2月)はこれまでよりもずっと明るい曲で、個人的には吉田真里子の中では一番好きな作品になりますが、オリコンは最高で21位。その後も正攻法の作品をシングル曲として切っていくわけで、ビジュアル的にもどんどんとあか抜けて奇麗になっていく印象はあったのですが、残念ながら前述のように、アイドル歌手としてブレイクにまでは至りませんでした。そして活動も少しずつ縮小していき、2002年結婚と同時に芸能界を引退するのでした。
とにかく今映像を見ても可愛らしさと美しさを兼ね備えていて、何か売り出す術はなかったのか、実に惜しい気がしてならない、それほどの素材でした。