80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.287
踊らせてトゥナイト 相楽ハル子
作詞 湯川れい子
作曲 新田一郎
編曲 新川博
発売 1986年10月
『スケバン刑事』出演で人気上昇、気の強そうな男前の女の子のイメージで歌手デビューも果たした勢いで、キャリア最高の実績を残した2ndシングル
相楽ハル子(のちに相楽晴子)が芸能界デビューしたのは1984年でしたが、最初はテレビドラマなどでの女優としてのスタートでした。そんな中1985年に「スケバン刑事Ⅱ」に出演したことから知名度が広がり、1986年5月『ヴァージン・ハート』で歌手デビューを果たしたのです。当時の若手アイドルにとって、スケバン刑事シリーズに出演することは大きな意味を持っていて、シリーズⅠ~Ⅲで主演した斉藤由貴、南野陽子、浅香唯はトップアイドルに昇り詰めましたし、共演の吉沢秋絵、中村由真、大西結花も飛躍への大きなきっかけとなりました。そして同じように相楽ハル子もその恩恵を受けた形になったわけです。
ただ相楽ハル子の場合は、強い目力、低く太めの声、年齢よりも大人びた雰囲気、はっきりした物言いとどの要素をとっても、かわいこちゃん系、ぶりっこ系で売り出すのは難しく、その結果デビュー曲『ヴァージン・ハート』はツッパリ系の歌詞とハードなロック調の音楽で勝負を挑むことになりました。実際そちらの方が、可愛いよりもカッコいい感じの彼女のキャラクターに合っていたと思いますし、いかにも気の強そうな相楽ハル子が、歌詞で《どきな!》なんて連呼すると、なかなかリアルに聴こえたものです。売上的にはオリコン最高29位、3.3万枚という結果でした。
今回取り上げたのはその次の2ndシングル『踊らせてトゥナイト』で、基本的にはデビュー曲の雰囲気をそのまま踏襲したような楽曲になっています。作詞はヒットメイカーの湯川れい子、作曲は新田一郎。新田一郎は楽器奏者でもあり、プロデューサーでもあり、ボーカリストでもあり、作曲家でもあり、アレンジャーでもありという多彩なミュージシャンでしたが、他のアーティストへの提供曲で大ヒットに結びついたものはほとんどなかったのではないでしょうか。高田みづえ『原宿メモリー』、沢田研二『渡り鳥 はぐれ鳥』あたりではちょっと弱いですね。デビュー曲『ヴァージン・ハート』の作曲はヒットメイカーの鈴木キサブローですから、ここは変えてきているのですね。
歌詞をみてみると、一見強気にふるまっている女の子の隠された恋心を綴っているような内容で、確かに相楽ハル子のイメージそのものって感じはありました。ただ、この曲では売れるのは厳しいだろうなというのが正直なところで、暗くハードめな曲調の歌をニコリともせずに、むしろ怖い顔で歌っているのでは、既に地位を築いているアイドルならともかく、歌手デビューしたての立場では、なかなか好きになってもらえないだろうという感じなのですね。もちろんライバルたちとの差別化のためにそういうイメージで行こうという戦略ではあったのでしょうが、若い男の子たちからすると、ちょっと近寄りがたい感覚になるのではないでしょうか。路線としては三原順子に近いかなとは思うのですが、そこまでの圧倒的な存在感はなかったかもしれませんね。それでも『踊らせてトゥナイト』はオリコン最高19位、売上3.4万枚ということで、彼女にとってはキャリアハイの成績となります。ただし、3rdシングル以降は次第に順位も売上も落としていくことになり、名前も漢字に変えて、歌手よりも女優としての活躍の場面が増えていくことになります。ただしその後外国人の方と結婚すると、芸能界から離れてしまいます。今はごくたまに懐かしの人としてメディアに登場するぐらいでしょうか。