80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.280

 

100カラットの瞳  長与千種

作詞 森浩美

作曲 吉実明宏

編曲 大谷和夫

発売 198610

 

 

 

女子プロレスが最大に盛り上がっていた時代のナンバーワンアイドルプロレスラーが放ったソロシングル 

 

 1970年代、マッハ文朱、そしてビューティーペアの登場でブームに火がついた女子プロレスは、1980年代半ば、クラッシュギャルズの登場で人気は最高潮に達します。対抗勢力としてダンプ松本、ブル中野といった悪役スターも登場し、テレビドラマにもレスラーが出演するなど賑やかな中、クラッシュギャルズとしてライオネル飛鳥と組んでレコードも出してそこそこのヒット。これについてはVol.112で触れています。そして長与千種はその勢いでソロシングルも出してしまったのがこの『100カラットの瞳』というわけなのです。

 

 『100カラットの瞳』とタイトルだけ聞くと、いかにも女性アイドル歌手が歌いそうな曲に感じてしまいますが、歌詞をみると、若者たちの背中を押すような応援歌になっていて、このあたりはプロレスラーという立場を意識したものにちゃんとなっています。まさかコテコテの恋愛ソングなんてはさすがに歌わないでしょう。改めて読むとクサい言葉が並んでいて、例えば

《羊の群れにいたら 弱くなるだけさ》

《教科書にのってない夢の偏差値 つぶした鞄の中 放りこんでさ》

《まるくなったら終わりさ 尖っていたいね》

など、普通に聴いていたらムズムズとくすぐったくなってきそうなのですが、これを長与千種がはっするのであれば、ファンからすると、すーっと心に入ってくるのでしょうね。作詞は森浩美。この頃からアイドルを中心に、ヒット曲の作詞家として活躍し始めていたのですが、その初期の頃のお仕事ですね。作曲は吉実明宏で、主なヒット曲としては、荻野目洋子『六本木純情派』、浅香唯『DREAM POWER』があります。。

 

 それでもって『100カラットの瞳』がどれぐらい売れたかというと、オリコン最高13位ですから、なかなかの健闘といっていいでしょう。クラッシュギャルズでのシングルの最高順位は15位でしたので、それを上回っているのですよね。それだけ長与千種の人気は絶大だったということです。男子のスポーツ選手では、野球選手や力士などがレコードをだし、中には増位山みたいな大ヒットになった例もありますが、女子のスポーツ選手では、ビューティーペアやクラッシュギャルズいった女子プロレスラーが圧倒的でしたね。平成以降はあまりこういったスポーツ選手がレコードを出すという機会も滅多になくなってしまい、そういった意味では何でもありだった昭和が懐かしい気もしますね。

 

 このあと長与千種は、続く『白い告白』(19871)でもオリコン最高19位、さらに『友情1987(19878)でも最高15位と、トップ20入りを果たすなど、しばらくその人気を保っていたのですから、それもなかなかすごいことです。長与千種以降、男女問わずプロレスラーでヒット曲を出したという例はなく、今思うと長与千種という存在は唯一無二の特殊な存在だったといえるでしょう。