80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.278
哀しみのシャングリラ 大西結花
作詞 湯川れい子
作曲 朝倉紀幸
編曲 入江純
発売 1987年9月
アイドルとして鳴かず飛ばずの状態から、スケバン刑事の風間三姉妹の長女としてブレイク、2曲続けてトップ10入りの7枚目シングル
1985年2月『アラベスク・ロマネスク』で歌手デビューを果たした大西結花でしたが、当時はまったく売れず、オリコンではトップ100にも入らない鳴かず飛ばずのアイドルでした。ところが人気ドラマシリーズの『スケバン刑事Ⅲ』において、長女大西結花、次女中村由真、三女浅香唯の風間三姉妹として出演するようになると、一気にブレイク。5thシングル『シャドウ・ハンター』(1987年2月)で初めてトップ100入りを果たす17位となると、続く『チャンスは一度だけ』(1987年6月)で最高10位を記録しました。まさにそんな昇り調子の中でリリースした7thシングルが、今回とりあげた『哀しみのシャングリラ』です。この曲は自己最高のオリコン9位を記録しました。
大西結花にとってはまさにスケバン刑事さまさまといったところで、この状況は浅香唯にとっても同じ効果を示しています。それまでパッとしなかったのが、一気にトップにまで昇り詰めるわけですから、斉藤由貴、南野陽子と続いたブランドは、かなり強力なものだったのですね。
さて楽曲『哀しみのシャングリラ』ですが、作詞がすでにベテランの域に入っていた湯川れい子、作曲がバンド朝倉紀幸&GANGのボーカルとしても活動していた朝倉紀幸。他の歌手への提供曲としてはCoCo『夏空のDreamer』『夢だけ見てる』、西田ひかる『きっと愛がある』が主だったところです。ただ大西結花の楽曲って、『哀しみのシャングリラ』に限らず、どこかあか抜けないというか、今っぽくない印象が強いのですよね。中には『渚通りのディスコティック』みたいに本当に古い曲をカバーしたものもあるのですが、そうでない新曲も地味なのですよね。どのように歌手としての大西結花を売り出そうとしているのか、いまいち戦略的に見えにくいところは正直ありました。湯川れい子を作詞に続けて起用するというのも、なんかピンとこなかったですしね。
歌詞の内容はといいますと、スケバン刑事がかなり意識されたものになっています。それもそのはず、『哀しみのシャングリラ』はドラマの挿入歌として使われたこともあるのですよね。全話ということではなく、そのうちの何話かということですが、「スケバン刑事Ⅲ」では中村由真と大西結花の歌が交互に何話かずつ挿入歌として使われていたようです。そのキーワードとなるのが“折鶴”で、歌詞の中に《涙で書いたラブレター 折鶴に秘めて》とあるのですが、これがドラマの中で大西結花演じる風間結花が使っていた武器が折鶴だったのです。武器が折鶴って?と、スケバン刑事を知らない人だと思ってしまいそうですが、ヨーヨーとかビー玉で戦う世界ですからね。ですから、この歌詞はまずは折鶴ありきで、それをどうやって組み込もうかというところから始まっていたのでしょう。それが結果的に『哀しみのシャングリラ』=夢の国という非現実的な世界観になったのでしょう。まあ、ただ暗い曲ですね。結果的に大西結花自身のイメージに、どこか暗いというか悲壮感のようなものが纏わりついてしまったような気はします。
その後、スケバン刑事の放映が終わると、大西結花の楽曲の売上も徐々に低下していくことになります。その後はスキャンダルに巻き込まれるなど、さらに悲壮感を伴うイメージになってしまったのは、気の毒な感じさえしましたが、それから結婚もして、ときおり懐かしのアイドルみたいな企画で顔を見せたりもしていますね。