80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.277
だって・フォーリンラブ・突然 三原順子
作詞 T.C.R.横浜銀蝿R.S.、山田麗子
作曲 TAKU
編曲 中島正雄
発売 1982年5月
セクシー系から路線変更したポップな曲調が成功、デビュー曲以来のヒットに結びついた横浜銀蝿作詞作曲の7thシングル
参議院議員として活躍している姿を、当たり前かもしれないですが、当時はまったく想像もできませんでした。ドラマ『3年B組金八先生』でのツッパリ少女役で人気となり、1980年9月に『セクシー・ナイト』でデビューした三原順子は、当初は松田聖子のぶりっこアイドルの対抗軸的なツッパリアイドルの代表格として扱われることが多く、それに合わせて、シングルレコードもそのツッパリのイメージに寄せた大人っぽい曲をリリースしていきます。その中でもデビュー曲『セクシー・ナイト』はオリコン最高8位、売上32.5万枚というなかなかの実績を上げ、一躍人気アイドルの仲間入りを果たすことになりました。
ただその後は今一つ売上的には伸び悩み、少しずつ売上も順位も下がってきてことで、それまでの大人っぽいセクシー路線から方向転換し、ポップな雰囲気に仕上げてきたのが今回取り上げた『だって・フォーリンラブ・突然』でした。結果としてそのイメージチェンジが新鮮に映り、オリコン最高11位、売上24.9万枚と、じり貧傾向から一気に挽回を果たしたのでした。
それでこの『だって・フォーリンラブ・突然』を作ったのが横浜銀蝿なのですよね。作詞はT.C.R.横浜銀蝿R.S.と山田麗子との共作。山田麗子というのは、三原順子が『3年B組金八先生』で演じた役名で、要するに三原順子のペンネームです。そして作曲が横浜銀蝿のメンバーのTAKU。横浜銀蝿だとJohnnyが嶋大輔『男の勲章』、岩井小百合『ドキドキHeartのバースディ・パーティ』、Johnny自身の『ジェームスディーンのように』などを、翔が紅麗威甦『ぶりっこRock’n Roll』、嶋大輔&杉本哲太+1『大輔★哲太のRock'n Roll』、嶋大輔『Sexy気分の夜だから』などを作曲していますが、TAKUも岩井小百合『ドリーム ドリーム ドリーム』『恋♥あなた♥し・だ・い!』、三原順子『ホンキでLove me Good!!』(1982年10月)などを手掛けていて、メンバーそれぞれが他のアーティストへの曲の提供をしているのです。その中でもJohnnyはメロディアスで切なげな曲、翔はシンプルな男っぽいロックを得意としているのに対し、TAKUはポップで明るい曲をよく作っていた印象です。そのポップさと、セクシー路線からの方向転換を図りたい三原順子の思惑が見事にマッチしたのが、『だって・フォーリンラブ・突然』だったのでしょう。
歌詞の方も、それまでの大人びた雰囲気からは一転して、キュートで愛らしいものになっていて、それまでの三原順子にはなかったものが出ていました。そしてそれが新しい魅力にもつながったのではないでしょうか。初めて新曲としてこの歌を聴いたときは、意表を突かれたような気にはなったのですが、楽曲の出来栄えもよかったこともあって、すぐに「なかなかいいじゃん」に変わっていきました。自虐的に《わりとウブだね 情けないけど》なんてあたりも、それまでの三原順子の世界だったら、絶対に出てこなかったはずです。
こうして方向転換によるイメージチェンジは見事に成功し、デビュー曲に告ぐヒット、さらにはこの年の年末には紅白歌合戦の出場も果たしたのです。ただし歌ったのは『ホンキでLove me Good!!』でしたが、この曲も同系統の唄でしたから、やはりこの路線への転換は大成功といっていいでしょう。結果的にこの年が唯一の紅白出場になったのですから、元歌手の国会議員というだけよりも、紅白歌合戦出場経験のある元歌手の国会議員という方が、肩書的にも箔がつきますからね。