80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.272
瞳がほほえむから 今井美樹
作詞 岩里祐穂
作曲 上田知華
編曲 佐藤準
発売 1989年11月
俳優業と歌手業の両方でヒット作を出し続けた今井美樹、次のシングルのミリオンヒットへのステップとなった80年代最後のヒット曲
俳優業と歌手業と両方で活躍を続けるタレントは昔から数多くいますが、大抵はどちらかに軸足が傾いているもの。それでも両方の分野で均等に活躍を続けている方もある程度いるもので、男性だと古くは加山雄三や中村雅俊から、福山雅治、星野源などへ続いています。女性だとアイドル系のタレントが多くて、中山美穂、原田知世、斉藤由貴、薬師丸ひろ子、小泉今日子などがいますが、アイドル出身の彼女たちとはちょっと色合いが違うのが今井美樹の存在でしょう。
今井美樹の女優としてのスタートは1984年になりますが、最初から人気があったわけではありません。歌手としてのデビュー曲が1986年5月の『黄昏のモノローグ』でしたが、4thシングル『彼女とTIP ON DUO』(1988年8月)が化粧品のCMソングからのヒットとなり、ブレイク。オリコン最高8位、売上14.1万枚を記録すると、女優業も昇り調子になっていきます。ちょうど『彼女とTIP ON DUO』のリリースと同じ1988年8月にTBSドラマ「意外とシングルガール」で主演を果たすと、そこからさらに勢いに乗っていくことになりました。
そんな上昇気流の中でリリースした6thシングルが今回取り上げる『瞳がほほえむから』で、この曲のオリコン最高順位は9位でしたが、売上23.5万枚とそれまでの最高を記録しました。翌7thシングル『PIECE OF MY WISH』のミリオンヒットへの、『彼女とTIP ON DUO』がホップとすれば、『瞳がほほえむから』はまさにステップといったところでしょう。このシングルは日本テレビの『水曜グランドロマン』の主題歌に起用されています。
作詞は岩里祐穂。いろいろなアーティストに作詞を提供している作詞家で、特に今井美樹には『PIECE OF MY WISH』『Miss You』などのヒット曲からアルバムの曲まで、多くの歌詞を提供しています。他のアーティストでは、中山美穂『幸せになるために』、堀ちえみ『さよならの物語』『夏色のダイアリー』『青い夏のエピローグ』、ももいろクローバーZ『サラバ、愛しき悲しみたちよ』、Sexy Zone『君にHITOMEBORE』『Cha-Cha-Cha チャンピオン』などがあり、かなり長い年月にわたって活躍しているのが分かります。
一方作曲は上田知華で、こちらは作詞作曲家以外にも、自らも歌手として活動もしています。今井美樹の曲では他に『彼女とTIP ON DUO』『Boogie-Woogie Lonesome High-Heel』『PIECE OF MY WISH』『Blue Moon Blue』などを作曲し、他のアーティストでは小川範子『無実の罪』、牧瀬里穂『ささげたい、あなたに…』などがトップ10入りしています。
この曲はとにかくメロディーが美しくて、私は大好きです。そしてさらには歌詞も強い決意と優しいぬくもりを感じるラブソングになっていて、それらが今井美樹の透き通る声と見事に調和しているのですよね。
《迷った遥かな日々 涙じゃなく力にして》
《遠い痛みもいつか愛の強さになる》
と、マイナスをプラスに変えていこうという強い意志を感じるところが、なんかとても気に入っていて、ある意味、90年代にはいってからの大ヒット曲群の原型になった曲ではないかとも思っているのです。今井美樹というとどうしても『PRIDE』『PIECE OF MY WISH』『Miss You』あたりがフィーチャーされることが多いのですが、私としては、この曲も忘れるなよなんていいたいですね。
最後に、今井美樹のシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。
1 瞳がほほえむから ★
2 PRIDE
3 Miss You
4 PIECE OF MY WISH
5 野性の風 ★
6 Bluebird
7 Boogie-Woogie Lonesome High-Heel ★
8 彼女とTIP ON DUO ★
9 Blue Moon Blue
10 静かにきたソリチュード ★
★=80年代発売