80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.268

 

ぶりっこRock‘n Roll  紅麗威甦

作詞 翔

作曲 翔

編曲 T.C.R.横浜銀蝿R.S.、若草恵

発売 19821

 

 

 

横浜銀蠅の弟分バンドによる、当時のぶりっこブームを茶化したコミカルなロックンロール・デビュー曲

 

 当時のツッパリブームを背景に、不良どもをコミカルに歌うことで人気を博した横浜銀蝿。その弟分バンドとしてデビューしたのが紅麗威甦(グリース)で、彼らが題材として選んだのが、これも当時の世相を反映した「ぶりっこ」でした。当時の「ぶりっこ」の象徴がアイドル松田聖子でしたが、それが広がってちょっとしたぶりっこブーム的な状態にあったのが198182年頃。「ぶりっこ」は決して誉め言葉ではなく、むしろ馬鹿にしたり揶揄したりそんな言葉ではありましたが、そんな「ぶりっこ」を思いっきり笑ってしまおうというのが『ぶりっこRock‘n Roll』だったのです。

 

 紅麗威甦はメンバー4人で構成されていましたが、中でも有名なのがボーカルとギターを担当した杉本哲太です。今ではすっかり名俳優となってしまいましたが、そんな将来などまったく想像すらできなかったくらいのツッパリ野郎だったのです。また紅麗威甦以外にも、LONELY RIDERSだったり、嶋大輔+1だったり、別の形でもレコードを発売していたりと、一家の中での期待値も高かったのですよね。ただけっして歌はうまいとはいえず、かなり粗削りでぞんざいな歌い方。それでも『ぶりっこRock‘n Roll』というタイトルのインパクトと、横浜銀蝿の弟分という話題性から、そこそこのヒットとなったのです。オリコン最高6位、売上16.6万枚という結果を残し、テレビやラジオのランキング番組でも観たり聴いたりもしました。

 

 まあ、横浜銀蝿の弟分ですし、コンセプトはほぼ同じ路線を行っていましたから、銀蝿と比べるとやや貫禄不足で青臭い印象もあって、個人個人の人気にはあまり結びつかなかったですね。兄貴分の衣を借りて粋がっているような、悪く言えばそんなイメージでした。結局デビュー曲の『ぶりっこRock‘n Roll』が唯一のトップ10ヒットとなり、2枚目以降の売上はじり貧になっていきました。

 

 それにしても『ぶりっこRock‘n Roll』は良くも悪くもふざけた曲です。歌の出だしが

《エー・ウソー・ヤダー・カワイイー》

と、ぶりっこを象徴するセリフが4つ並んだあとに

《ぶりぶりぶりっこRock’n Roll ぶりぶりぶりっこRock’n Roll かわいこぶりっこ いいこぶりっこ ぶーりぶりぶりRock’n Roll》

と「ぶりぶりぶりっこ」の繰り返し。そして

《お目々パッチリ クリックリ かまちんカットで首かしげ レースのハンカチにぎったら 涙出さずに泣いた顔》

と、当時「おかあーさん」と涙を流さないで泣いたとされる松田聖子を完全にパロディ化しています。このあたりの歌のつくり方は『ツッパリHigh School Rock’n Rollシリーズと同じ手法です。茶化す対象がツッパリ野郎かぶりっこちゃんかと異なるだけで。で結局のところ

《わかっちゃいるけど憎めないんだ》

と、なんだかんだいっても、ぶりっこちゃんには男は弱いんだという結論で、この曲は終っていきます。

 

 ただ所詮二番煎じ的なグループの二番煎じ的な曲でしかなく、『ツッパリHigh School Rock’n Roll』シリーズは語られることは時々あっても、『ぶりっこRock‘n Roll』がこんにち語られることは滅多にないというのが、すべてを物語っているでしょう。