80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.261

 

マイ・ボーイフレンド  北原佐和子

作詞 堀川マリ

作曲 梅垣達志

編曲 梅垣達志

発売 19823

 

 

 

大々的なプッシュの下、あまりに儚くて心もとない、聴いている方も心配になってしまう歌唱力が逆に魅力のアイドルのデビュー曲

 

 北原佐和子、真鍋ちえみ、三井比佐子の3人組として、歌手デビュー前からいろいろな雑誌で露出された「パンジー」。まさに女性版たのきんトリオというところを狙って、売り出しにかかっていたのですが、その中でもルックス的に目立っていたのが北原佐和子でした。この3人組はたのきんと同様に、3人のユニットとして歌を出したりというこはなく、それぞれソロ歌手としてデビューしていくことになりますが、その先陣を切って19823月に歌手デビューを果たしたのが北原佐和子でした。デビュー曲『マイ・ボーイフレンド』はオリコン最高25位、売上6.6万枚と、出だしとしてはそこそこの結果を残します。

 

ちなみに真鍋かおりのデビューは19825月の『ねらわれた少女』で最高91位、三井比佐子のデビューは19826月の『月曜日はシックシック』で最高93位と、北原佐和子とは大きく水をあけられる結果となり、この結果からもパンジーの3人組は明らかに北原佐和子がメインというのがわかります。大々的なプロモーションの割には、2人の結果は辛いものがありますが、当時は人数合わせのためにくっつけられるメンバーが発生していたのも事実。たのきんのヨッチャンとかはその典型ですね。

 

ただこの北原佐和子には致命的な弱点がありました。それが歌唱力です。歌が上手なアイドルがまだ多かった時代でも、もちろん歌がお上手でなく、歌唱力を揶揄されたり冷やかされたりするような歌手もいました。能瀬慶子、浅田美代子、大場久美子、風吹ジュン、森尾由美などはその仲間でしたが、北原佐和子もその一員。ちなみに同じパンジーの三井比佐子も結構衝撃的でしたね。今みたいにグループの中の一員であれば、周りの声にかき消されてしまいますので、少々下手でもアイドル歌手としてもなんとかごまかせるのですが、当時はソロ歌手が基本。芸能界で成功するにはまず歌を出さざるを得なく、こうした中で仕方なく歌わされてきたのでしょうか。ただこのメンバーをみると、浅田美代子とか風吹ジュンとかは今でも女優やタレントとして大活躍していますし、森尾由美もレギュラーを続けているなど、歌がうまければいいというものでもないことは明らかです。とりあえず歌で知名度を広げて、得意な方向へ進んでいくというのが、ひとつの道筋だったわけですね。

 

それにしても、北原佐和子の歌はとにかく不安でした。聴いていて心配になるほど。女性アイドルのデビュー曲としては実に可も不可もなさそうな『マイ・ボーイフレンド』というタイトルからしても、歌手で成功させてやろうという意気込みのようなものはあまり感じませんし、作詞の堀川マリという人物もよく分かりません。北原佐和子以外の業績も不明です。北原佐和子が好きで買う人以外にはなかなかこのレコードを買う人はいなかったでしょうね。『マイ・ボーイフレンド』の歌がいいから買おうなんて人は当然狙っていないわけで、結果的にこのデビュー曲がキャリアハイとなり、2枚目以降は急下降。特にこの1982年はライバルに逸材が多かったというのも大きかったでしょうか。デビュー曲の売上では大きな差のなかった他の82年組の面々も、次第に差を広げられていってしまいました。

 

 その後は女優として時代劇や2時間ドラマをメインに活動を長く続けましたが、近年は介護の仕事もダブルワークとして携わっているようです。