80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.253
SUMMER TOUR RCサクセション
作詞 忌野清志郎、仲井戸麗市
作曲 忌野清志郎、仲井戸麗市
編曲 RCサクセション
発売 1982年6月
意外にもRCサクセション唯一の一桁順位のシングル曲、清志郎ユニット曲のヒットの勢いそのまま持ち込み、母体でも躍進
1982年2月発売、忌野清志郎と坂本龍一の企画ユニットによる『い・け・な・いルージュマジック』が大ヒットしたことで、一躍忌野清志郎の名前が、特定の音楽ファンから一般の人々までに一気に広がりました。それと同時に忌野清志郎の母体であるRCサクセションの存在も周知され、その勢いのある中で、直後に発売されたシングルが『SUMMER TOUR』でした。それまでのRCサクセションはシングルチャートの上位に顔を出すことはなく、3rdシングル『ぼくの好きな先生』(1972年2月)の70位が最高記録。好きな人は好きだけれど、一般的な認知はそれほどでもないというバンドでした。それがデビューから12年、ようやくヒットに恵まれたのです。
そして『SUMMER TOUR』はオリコン最高6位、売上21.7万枚を記録し、結果としてRCサクセション最大のヒットシングルになりました。もっとも、そのわりにRCサクセションとしての一番の代表曲というイメージはないのが不思議なところで、むしろトップ100圏外の『雨あがりの夜空に』(1980年1月)や最高83位の『トランジスタ・ラジオ』の方が聴かれることも多く、その意味では『い・け・な・いルージュマジック』のヒットが勢いづかせてくれたという面が大きかったのだろうということは想像できます。実際私自身も『い・け・な・いルージュマジック』で忌野清志郎に初めて注目した側だったので…。
さて『SUMMER TOUR』ですが、当時中学生で思春期真っ盛りの少年にとっては、少々刺激的な作品で、親の前で堂々と口ずさめるような歌ではなかったです。《甘い唇》《白い足》《ガウンひとつまとって》《ビキニスタイル》《抱きしめたい濡れたまま》《やわらかい胸》と、夏のプールサイドで繰り広げられる男と女の愛の駆け引きをエロティシズムの要素を入れ込んで歌っていて、歌詞の意味もいろいろと想像させるものになっています。ジメジメ、ムンムンとした夏の熱気のようなものが作品全体から伝わってきて、聴いている中学生はモンモンとした気分になってくると、そういう次第なのでございます。
とにもかくにも『SUMMER TOUR』はセールス的には一定の成果を上げ、さらにここから飛躍していくかと思われましたが、RCサクセション自体が大衆に寄り添うようなバンドではなかったのですね。また、たまに出るテレビでは大人たちに眉を顰めさせるような過激なパフォーマンスも目立ってしまい、特定のコアなファンをターゲットとした活動が中心に戻っていきます。それでも忌野清志郎というアーティストの抜群のカリスマ性というものは、その後も様々な形で音楽ファンを引き付けていくことになるのです。RCサクセションとしては、名曲をカバーした『LOVE ME TENDER』(1988年8月)がオリコン10位と、2曲目のトップ10入り。またTHE TIMERSでは『デイ・ドリーム・ビリーバー』(1989年10月)がオリコン2位のヒット。さらにソロ曲『パパの歌』(1991年5月)がCMで話題となりオリコン12位と、いろいろな形で話題曲を世に放っていきました。
そんなこんなで、とにかく忌野清志郎率いるRCサクセションは、その数字としての実績以上に、多くの人々に残る歌を送り出してきて、記録よりも記憶に残るバンドとして、今も語り継がれているということなのですね。