80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.231
すみれSeptember Love 一風堂
作詞 竜真知子
作曲 土屋昌巳
編曲 土屋昌巳
発売 1982年7月
当時の日本では斬新で衝撃的だった、中性的ないで立ちで異彩を放った実力派バンドのヒット曲、後にSHAZNAにより二度目のヒットも
今でこそ化粧をして中性的なファッションに身を包んだミュージシャンは珍しくありませんが、当時としてはまだまだ異端な存在。ただ1982年は、春に忌野清志郎+坂本龍一の企画ユニットが、化粧品のキャンペーンソング『い・け・な・い・ルージュマジック』を派手な化粧をして大ヒットをとばし、海外ではカルチャークラブがデビューしヒットを飛ばすなど、男の化粧と中性的ファッションに対して、ようやく大衆的に受けいれられはじめた、そんな年でもありました。そんな中で突然大ヒットを飛ばした一躍知名度を上げたのが一風堂でした。
一風堂は、中性的な化粧とファッションで目を引いたボーカル土屋昌巳や、のちに作曲家としても活躍した見岳章らがメンバーとした、1979年にデビューしたロックバンドです。しばらくは売れない時期が続いてはいましたが、この6枚目のシングル『すみれ September Love』がカネボウ化粧品のCMソングに起用されたことで、一気に知名度を上げ、初めてオリコンシングルチャートのトップ100に入っただけでなく、最高2位、売上45.2万枚をきろくしたのです。一見、際物バンドに見えたのですが、実は実力に裏打ちされたバンドでもあり、土屋昌巳は多くのアーティストのプロデューサーとしても活躍し、見岳章も前述のように、作曲家としても成功をおさめます。提供した主な作品としては、美空ひばり『川の流れのように』、とんねるず『雨の西麻布』『やぶさかでない』、おニャン子クラブ『恋はくえすちょん』、ニャンギラス『私は里歌ちゃん』などがあります。
ただあくまでも個人的な趣味ということで申しますと、当時はこの曲をあまり好きではありませんでした。毎週のようにテレビのランキング番組に登場していましたし、ラジオでもテレビCMでも街角でも流れ、まあ、聴き飽きていたというのはありますね。でもそれ以前に、この曲をいいと思わなかったのです。歌詞はキャンペーンのコピーを強調したサビだけが印象に残るもので、情緒を揺らすようなものでもありませんし、メロディーもわりと平坦で単調。そして土屋昌巳の独特な風貌はどうにも好きになれず、なんでこんなにヒットしているのか、腑に落ちないところはあったのです。
ところが15年後の1997年にこの曲をSHAZNAがカバーして、またまたヒットしてしまうのですよね。当時女装していたIZAMが土屋昌巳にシンパシーを感じるのは分からないではないですが、世間もそれを受け入れて、結局同じ曲が15年の年月を経て、どちらもヒットしてしまうということですから、楽曲の持つパワーというものは、実はかなりのものだったということなのでしょう。恐るべし『すみれSeptember Love』。結局一風堂にとっては唯一のヒット曲となったわけです。