80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.224
サマーインサマー〜想い出は、素肌に焼いて〜 八神純子
作詞 山川啓介
作曲 八神純子
編曲 大村雅朗
発売 1982年3月
八神純子的夏のリゾートソングは、ウキウキソングとは対照的な、真夏のけだるさを感じさせるJAL沖縄キャンペーンソング
八神純子は1978年1月『想い出は美しすぎて』の本格デビュー後、1980年にかけてヒット曲…『みずいろの雨』(1978年9月、オリコン2位、58.8万枚)、『ポーラ・スター』(1979年7月、オリコン8位、24.5万枚)、『パープルタウン』(1980年7月、オリコン2位、56.4万枚)、『Mr.ブルー~私の地球』(1980年11月、オリコン8位、29.9万枚)などを次々に送り出し、テレビのランキング番組でも歌う機会が多くなり、人気歌手の仲間入りを果たしました。ただ1981年に入るとその勢いに陰りが見えはじめ、音楽的にも売れ線狙いというよりも、自分の好きな音楽へと舵を切っているような雰囲気も受け取れました。
そんな中でリリースしたのが『サマーインサマー』でしたが、この曲はJALの’82沖縄キャンペーンのイメージソングに起用されましたので、それなりに力は入っていたのではないでしょうか。この前年の’81沖縄キャンペーンでは石川優子の『シンデレラ・サマー』がヒットしましたし、自身の『パープルタウン』もJALのニューヨークキャンペーンのCMソング。ただ当時の八神純子というと、夏というよりは冬、リゾートというよりは都会のイメージが強かったので、夏の沖縄のキャンペーンでどういう曲を作ってくるかと思ったところ、この『サマーインサマー』だったのです。
八神純子の作るサマーリゾートソングは、やはり夏真っ盛りの元気印的な曲ではなく、真夏の暑い午後に海辺に体を横たえてボーっと過ごすようなけだるさが前面に出た一曲になっていました。でこそのけだるさ感が不思議と心地よいのですよね。そして山川啓介の作詞もその世界にぴったりはまっていて、いい雰囲気!
ちなみに山川啓介の主な作詞曲というと、矢沢永吉『時間よ止まれ』、岩崎宏美『聖母たちのララバイ』『家路』、西城秀樹『勇気があれば』『悲しき友情』、郷ひろみ『哀愁のカサブランカ』(日本語詞)、中村雅俊『ふれあい』、青い三角定規『太陽がくれた季節』、ゴダイゴ『銀河鉄道999』(共作)、そして八神純子『Mr.ブルー 〜私の地球〜』などがあり、そのアーティストの代表曲的な作品を多く提供している印象です。
その山川啓介による歌詞をみると
《海から 光のシンフォニー響く めまいの午後》
《あなたの視線に抱かれて 夢に堕ちてく》
《何もかもが コバルトの蜃気楼》
《けだるい都会の日々が 素肌に溶けてく》
と、上手に言葉を使って、夏のけだるい気分を表現しているのですよね。きっちりCMに合わせた詩を作ってくるところはプロですね。そういえばこの頃の八神純子は、日に灼けた小麦色の肌で歌っていたのですよね。歌に合わせたのでしょうね。八神純子が夏の歌を歌うとしたら、こんな感じだろうね、まさに『サマーインサマー』はそんな曲で、個人的には結構気に入っていました。ただ一般に売れるかというと、ちょっと微妙かなとも思っていたのは事実で、結果としてオリコン最高28位、売上10.6万枚にとどまり、八神純子にとっては、最後の10万枚超えシングルとなったわけです。
その後は海外に拠点を構えるなど、日本の流行音楽からは距離を置くようになりましたが、今も時折昔の音楽特集の番組に登場し、かつてのヒット曲を歌ったくれたりするので、そのたびに懐かしくさせられますね。