80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.213

 

愛の中へ  渡辺徹

作詞 大津あきら

作曲 木森敏之

編曲 木森敏之

発売 198212

 

 

 

忘れちゃいけないラガー刑事のもう一つのヒット曲、グリコのCMにもマッチした、せつなさにあふれたラブソング

 

 渡辺徹がアイドル的な人気を博していた過去が、笑いのネタになるようになってからかなりの年月が経ちますが、確かに19828月にリリースした2枚目のシングル『約束』は、オリコン最高2位、売上54.4万枚という大ヒットになり、テレビの音楽番組を毎週のように賑わしていたことは間違いありません。当時「ラガー」刑事役で出演していた「太陽にほえろ」で人気が上昇していたのですが、ブレイクの直接的なきっかけとなったのがグリコのCMでしょう。小泉今日子とともに出演したグリコアーモンドチョコレートのCMで『約束』が使われたことで、渡辺徹人気が爆発、それに合わせて『約束』が大ヒットしたのです。

 

当時グリコのCMに男女カップルで起用されるということは、トップアイドルの一種のステイタスのようなものになっており、山口百恵&三浦友和、松田聖子&田原俊彦に続く小泉今日子&渡辺徹ということで、このCMに抜擢されたということは、かなりすごいことだったのですよね。今でこそ小泉今日子と渡辺徹と並べると、バランスが悪いように感じますが、当時の小泉今日子はまだデビューしたての新人で、歌もそんなに売れていない状態。むしろ渡辺徹の方が知名度もあって格上ぐらいで、そういった意味では、山口百恵、松田聖子から続くラインで小泉今日子を抜擢したというのは、かなり先見の明があったといえるのではないでしようか。

 

話はそれてしまいましたが、そんなこんなで大ヒットした『約束』の次に発売した3rdシングルが今回取り上げた『愛の中へ』です。この曲もオリコン最高6位、売上21.0万枚となかなかのヒットになったのですが、実は結構忘れられがちな可哀そうな曲でもあるのですよね。『愛の中へ』も『約束』と同様に、グリコのCMソングに起用され、小泉今日子と共演、高原のリゾートっぽいところでの映像は、これまたなかなかいい雰囲気でした。私個人的には『約束』よりも『愛の中へ』の方がずっと好きで、発売されたのが冬ということで、この季節にあった切なげなラブソングになっているのですよね。CMにもぴったり。でも、渡辺徹の歌として紹介されるのはほぼ『約束』一択。『愛の中へ』もヒットしたじゃないか!ってその都度声をあげたくなるのですよね。

 

作詞大津あきら、作曲木森敏之ということで派手さはないけれども堅実な仕事をこなすイメージの組み合わせで、チャラついたアイドル的な歌はジャニーズに任せて、刑事ドラマに出ている大人の俳優としては、曲も落ち着いたアダルトな路線でということでしょうね。なので歌詞も奇をてらったものではなく、ストレートなラブソングになっています。タイトルからして『愛の中へ』ですから、推して知るべしといったところですね。でも、これいい曲だと思うのですけどね…。結局渡辺徹にとっては最後のヒット曲となってしまいました。

 

このあと渡辺徹は自らの巨体化が進んでいくと、アイドル的人気とは程遠いところへと進んでいきます。実は1曲置いた5thシングル『AGAIN』もグリコのCMに起用されているのですよね。この『AGAIN』も個人的には好きな曲なのですが、残念ながらかつての勢いはなく、チャートの最高は21位どまり。売上8.6万枚は、4thシングルと比べると結構戻してはいるのですが、歌手としての人気低下を否定できる数字にはならず、そしていつのまにか渡辺徹のアイドル時代はネタになっていくというわけです。