80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.199

 

微妙なとこネ  松居直美

作詞 売野雅勇

作曲 井上大輔

編曲 井上大輔

発売 19833

 

 

 

デビュー曲の演歌から一転、コミカルな曲調が本人のキャラクターにマッチして知名度アップに貢献した2ndシングル

 

 松居直美というと、どちらかというとバラエティタレントというイメージが強いのではないでしょうか。欽ちゃんの番組でコントを演じて笑いをとってみたり、一時はよくものまね番組にも出ていましたし、近年は日曜日の早朝に森尾由美、磯野貴理子と3人でゆるいトークを繰り広げていますね。でも実はデビューは歌手、それも演歌歌手だったのですね。19822月にリリースされたデビュー曲のタイトルは『電話のむこうに故郷が』。この作詞がなんと武田鉄矢、そして作曲が小林亜星ということで、当時の雑誌の新人歌手紹介特集などにも出たりしていたのですが、売上は振るわず、オリコントップ100にも登場することもありませんでした。

 

ところが松居直美のキャラクターが欽ちゃんによって見出されることで、流れが変わってくるのですね。『欽ドン!良い子悪い子普通の子』のコントコーナー「良いOL・悪いOL・普通のOL 」で「普通のOL」役に起用されると徐々に人気を呼び、番組企画として参加したよせなべトリオとしてのシングル『大きな恋の物語』(19828)がオリコントップ10入りのヒットと、知名度も上げていくことになります。そして1年ぶりになった2枚目のシングル『微妙なとこネ』は演歌から一転、コミカルな味付けのポップスで勝負をかけたのです。作詞が当時売れっ子作詞家へと上昇中の売野雅勇、作曲も売れっ子作曲家の井上大輔ということで、ヒットを狙った布陣といえるでしょう。井上大輔作曲のヒット曲というと、郷ひろみ24千万の瞳』、シブがき隊『NAI・NAI16』『100%…SOかもね』『処女的衝撃』『挑発∞』、フィンガー5『恋のダイヤル6400』『学園天国』、シャネルズ(ラッツ&スター)『ランナウェイ』『街角トワイライト』『ハリケーン』『め組の人』、小泉今日子(あんみつ姫)『クライマックスご一緒に』、浅香唯『瞳にSTORM』『虹のDreamer』、杏里『気ままにREFLECTION』、石川秀美『スターダスト・トレイン』、南野陽子『風のマドリガル』、倉沢淳美『プロフィール』、杉浦幸『四月列車』、吉田栄作『もしも君じゃなきゃ』などなど、そうそうたるラインアップです。

 

こうして松居直美の上り調子の勢いに売れっ子作家の力が加わり、『微妙なとこネ』は一気にオリコン25位にまでジャンプアップし、8.5万枚を売り上げたのでした。この曲はタイトルからしてわかるように、歌詞としてはコミカルなものになっています。《どっちにしても どっちにしても微妙なとこネ》《そんなあなたが 微妙にスキ》と、いかにも若者的な言い回しを繰り返すことで、印象づけを狙っているのでしょう。一方で曲は決して明るいものではなく、マイナー調で、歌詞がこれでなければ、もっとシリアスに聴こえる歌になっていたのでしょう。そしてなんといっても特徴的なのは松居直美の歌い方。《どっちにしても どっちにしても微妙なとこネ》とコミカルにかわいらしく歌ったかと思うと、突然《そんなあなたが》とどすのきいた太い声で脅しをかけてくる(?)のです。このあたり、演歌を歌っていたことが生きたのか、はたまた後に披露したものまねの片りんを見せたのか、都はるみチックな歌い方で、ちょっとふざけているようにみせるわけです。これがコントで定着してきた彼女自身のキャラクターにマッチしたというのもあるのではないでしょうか。

 

このスマッシュヒットのあとは、再び演歌に戻ってみたり、或いはチェッカーズと競作してみたりと、歌手活動については、よく言えばバラエティ豊かな展開、悪く言えばどっちつかずでフラフラしている感もあり、結果として『微妙なとこネ』が唯一のオリコントップ100入りのシングルとなったわけです。ただその後のバラエティでの活躍は冒頭に記した通りで、長く芸能界で活躍し続けることができたというのは、やはり欽ちゃんに見いだされたことが大きかったとのではないでしょうかね。