80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.186
ラヴ・イズ・オーヴァー 欧陽菲菲
作詞 伊藤薫
作曲 伊藤薫
編曲 若草恵
発売 1982年9月
台湾出身の濃ゆ~い女性シンガーの11年ぶりのナンバー1ソングは、幅広い層に支持された正統派ラブバラード
台湾出身のシンガー欧陽菲菲(オーヤンフィーフィー)は1971年9月に『雨の御堂筋』で歌手デビューすると、いきなりオリコン1位、売上79.2万枚を記録し、人気歌手となりました。1971年から1973年にかけてヒット曲を連発し、計5曲をシングルチャートのトップ10に送り込んできたのです。しかしながら8thシングル『火の鳥』(1973年12月)を最後に、オリコンシングルチャートのトップ100から
消えてしまい、コンスタントにシングルは出し続けながらも、ヒットに恵まれない時期が長く続きました。ところが、1982年9月に発売した『ラヴ・イズ・オーヴァー』が前兆もなく突然の大ヒットとなり、欧陽菲菲はまさに不死鳥のごとく80年代になって蘇ったのです。『ラヴ・イズ・オーヴァー』は『雨の御堂筋』以来11年ぶりのナンバー1ソング、トップ10ということでも『恋の十字路』(1973年4月)以来9年ぶりということでしたが、52.2万枚という売上実績を残しました。
『ラヴ・イズ・オーヴァー』は愛の終わりを歌った正統派のラブ・バラードで、かつてのヒット曲『雨の御堂筋』や『雨のエアポート』(1971年12月)のコテコテ感のイメージからは離れて、非常に落ち着いた雰囲気の大人の作品でした。そこに台湾訛りの残る欧陽菲菲の歌唱がうまくはまって、サーツと流れるのではなく、一つ一つの言葉がどっしりと留まっていくように聴こえることで、感情がしっかり伝わる作品になったように思います。
ただこの曲に関しては、ドラマやCMなどの大々的なタイアップがあったわけではなく、実は1979年7月発売『うわさのディスコ・クイーン』のB面扱いだったのですね。A面はまったく売れなかったのですが、B面だった『ラヴ・イズ・オーヴァー』が、口コミなのか、有線なのか、とにかくじわじわと浸透しく中で、レコードの売上にもつながっていったようです。前作もオリコントップ100にも入らない売れ行きだったので、この曲の1位獲得は、そういった意味では唐突な気がしたのは確かです。特に『雨の御堂筋』や『雨のパスポート』のヒットを幼くてリアルタイムでは認識していない私ぐらいの世代にとっては、この日本語片言の濃ゆいおばさん、いったい誰?状態でしたね。
歌詞は切ないです。愛していながらも、自ら男に別れを切り出す女の気持ちを歌ったもので、難しい言葉は使っていないのですが、当時中学生の私には、この曲の良さはあまり理解できませんでした。いや、大人になった今でも、この女の気持ちを完全に理解できるかと言われれば、自信はありません。《悲しいけれど 終わりにしよう きりがないから》《わけなどないよ ただひとつだけ あなたのため》《亡くな男だろう 私のことは早く忘れて》《きっとあんたにお似合いの人がいる》と相手には私のことは早く忘れて次に進んでほしいといいながらも、《わたしはあんたを忘れはしない 誰に抱かれても忘れはしない》と自分の方は忘れることはないといっているわけなのですよね。ちょっとカッコつけすぎてはいませんか?的なところもあるのですが、相手を思って身を引く女の姿が、多くの大人たちの心をつかんだということでしょう。
欧陽菲菲はこの曲で紅白歌合戦にも復活するなど、日本における歌手活動の2回目のピークを迎えることになり、そして『ラヴ・イズ・オーヴァー』スタンダードナンバーとして、カラオケなどで歌い継がれていくことになるわけです。