80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.171

 

バージンブルー  SALLY

作詞 さがらよしあき

作曲 鈴木キサブロー

編曲 鈴木キサブロー、大島みち

発売 19847

 

 

 

チェッカーズに続けとばかりに、雨後の筍のごとく出てきたアイドル系バンドの中で、CMとも連動して一発当てたデビュー曲

 

1984年にブレイクしたチェッカーズをきっかけに、その1984年から1986年頃にかけて、アイドル的要素を兼ねたバンドが多く登場してきました。そんなバンドの中でもヒット曲を連発した横綱がチェッカーズ、大関がC--Bとするならば、一発当てたこのSALLYは前頭筆頭ぐらいでしょうか。夢工場、XIE-XIE、BEE-PUBLIC、ヒルビリー・バップスといったところは、だいぶさがって十両ぐらいの位置づけでしょう。

 

 SALLYのデビュー曲『バージンブルー』は、「キリンレモン」のCM曲に使われ、この効果がかなり大きかったのではないでしょうか。青春時代の甘酸っぱい恋を描いたような映像と、ちょっと切なげな『バージンブルー』のサビが見事にマッチして、雰囲気のある「いい感じ」のCMに仕上がっているのですね。一方で日本の音楽界はチェッカーズ旋風の真っただ中で、業界としては、第23のチェッカーズを生み出そうと躍起になっているころ。その2つの相乗効果によって、いきなりデビュー曲でオリコン最高6位、売上21.4万枚というヒットに繋がったのでしょう。そのヒットにより、テレビの音楽番組にもたびたび出演し、あのCM曲を歌っているバンドなのかと、SALLYの存在が知れ渡っていったのでした。

 

 チェッカーズもデビューからしばらくは、プロの作家による楽曲を歌っていましたが、SALLYの『バージンブルー』もメンバーの自作ではなく、プロの作家によるものです。B面曲はメンバーの作詞・作曲となっていますので、曲を作れないということではなかったのですが、このあたりはまずは実績を残して顔と名前を覚えてもらおうという戦略的なことでしょうか。確かに鈴木キサブローの作ったこの曲は、覚えやすくかつ耳に残るサビで、さすがにプロの仕事ではあります。そして作詞はさがらよしあきですが、この曲意外には目立ったヒット曲はなく、どちらかというとアニメや特撮もののテーマ曲を中心に活躍した作詞家です。さがらよしあきにとってこのヒットは、まさに一世一代の仕事としたといった感じなのかもしれません。

 

 歌詞をみると、若い二人の向こう見ずとも思われるような恋を描いた内容になっています。ちょっと不良っぽい男の子と、そんな男の子を好きなちょっとイケてる感じのポニーテイルの女の子という、1980年代前半のツッパリ文化の流れ(ハイティーンブギとか横浜銀蝿とか)を汲んだような、当時の「ヤング」受けをズバリ狙ったど真ん中の歌詞なのですね。《お前と裏切りの夏》《ママにないしょのTelephone おまえ悲しく Say Good Night》《世間知らずと 誰もが許さない恋》と、二人の恋が周囲に歓迎されていない、反対されている、そんな状況の中で燃え上がる恋。《お前と裏切りの夏 闇に向かってアクセル》《心にはいつもジャックナイフ 青い火花を散らした》《俺達ふたり 傷だらけでも》と少しとんがった言葉で表現された、二人の繊細な心。このあたり、どストレートではあるのですが、実は当時の若者に響く言葉は何かと、巧みに練られた詩になっているのです。このようにSALLYのデビュー曲のヒットには、戦略的な部分が大きく貢献していたことは間違いないでしょう。

 

 ただSALLYのシングルトップ10入りはこのデビュー曲のみ。3rdシングル『愛しのマリア』(19852)がオリコン13位を記録した以外はトップ20にも届かず、6枚のシングルを発売して、解散してしまうのです。楽曲的には同系統の曲で、いずれもキャッチーな楽曲だったのですが、練りに練られたデビュー曲ですべて出し尽くしてしまったのか、或いはSALLYというバンドにファンを引き付けておく魅力が乏しかったのか、結果的には一発屋で終わってしまったのでした。