80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.166 

 

うなずきマーチ  うなずきトリオ

作詞 大瀧詠一

作曲 大瀧詠一

編曲 多羅尾伴内

発売 19821

 

 

 

今で言う「じゃない方芸人」3人が遊びで出した企画ソングは、びっくり仰天、大瀧詠一の作品だった!

 

 うなずきトリオとは、それぞれ漫才コンビのツービートのビートきよし、紳助・竜介の松本竜介、B&Bの島田洋介の3人組のことです。当時漫才ブームの真っただ中、それぞれビートきよし、島田紳助、島田洋七という強烈なキャラクターと話術を持った相方の陰で、漫才ではいつもうなずいているだけの存在と揶揄される同士で、面白半分、いや完全にお遊びで組まされた3人だったのです。今で言う「じゃない方芸人」といったところでしょうか。本人たちがどう感じていたかはわかりませんが、そんな大人しい、うなずき3人組が、ついでに出してしまったレコードが『うなずきマーチ』でした。この曲はテレビ番組でも披露され、結構話題になったりもしましたが、オリコン最高55位、売上3.5万枚と、売上はさほどでもありませんでした。

 

 ただこの曲、実は作詞・作曲、そしてプロデュースが大瀧詠一なんですよね。お笑い芸人が歌う曲でも、楽曲はわりとまじめに作られるケースも多いですが、こと『うなずきマーチ』に関しては、完全にギャグソングですし、かなり自虐的です。よくもこんな作品を大瀧詠一が作ったなあという、そういった意味では意外性100%といっていいでしょう。《今日も元気だ 首すじ軽い 前後左右に 縦横無尽 手塩にかけたこのうなじ 明日もうなずきゃ ホームラン》とうなずく動作を軽く茶化しておいて、《西へ行っては うなずいて 皆見に来ても うなずいて 北いにこたえ うなずいて 東 ずんでもうなずいて》と言葉遊び。そしてサビでは《ナナナ ウナ ウナウナナ ズキ》の繰り返しに終始し、これをうなずいてばかりで面白いことを何も言えない(と揶揄される)3人が自ら歌うのですから…。

 

 まあ歌っている3人も、このころになると、うなずきこそが自分たちの個性だとばかりに、喜んでテレビ番組内でトリオで登場して、外れ気味の音程で楽しそうに歌っていたのですから、これはこれで良かったのでしょう。《よしなさい》《なんでやネン》《そんなアホな》と3人のおなじみの決め文句(?)もきっちり歌詞の中に入れ込んで、大瀧詠一は実に至れり尽くせり。テレビにも出なかった大瀧詠一が、本当に、よくもこんな企画に乗っかったものです。それだけでも、この曲は価値があるといえるのかもしれません。

 

 この後もお笑い芸人がレコードを出すことはありましたが、その中でも「じゃない方」的な芸人が組んで歌ったというのは、後にも先にもこのうなずきトリオぐらいだったでしょう。