80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.158

 

スローダンサー  ガンジー

作詞 木暮陽

作曲 ガンジー

編曲 後藤次利

発売 19826

 

 

 

忽然と現れ忽然と消えていった謎のミュージシャンが残した唯一のヒット曲

 

 名前を聞いただけでどこか胡散臭さの残るガンジーという名前。当然インドの独立運動家マハトマ・ガンジーを思い浮かべるわけで、奇しくも1982年はアカデミー賞で作品賞を獲得した映画「ガンジー」が公開された年でもあり、世の中ガンジーブーム(?)でもあったわけで、その中で突如として日本の音楽業界に現れたのです。確かに映像を見ると、その見かけも胡散臭さ満点で、パーマをかけた長髪にサングラス、そして特徴的なハスキーボーイスと、本当にインドからやってきたのでは?と思わせるようなムードはありました。確かこの『スローダンサー』がデビュー曲で、当時のラジオでは、この発売前後には、かなりの頻度で紹介されていたことを覚えています。胡散臭い新人アーティストに、大掛かりな売り込みがかかったのでしょうか。ラジオから流れる『スローダンサー』は、アイドルたちや演歌勢、ロックミュージシャンが席巻するヒットチャートに慣れた中学生にとっては、かなり異質でアダルトな音楽でした。

 

 《それでいい 踊り続けて つかのまの恋に酔えばいいのさ スローダンサー 踊り続けて 冷え切った心 燃えつくすように》と、AOR風けだるいメロディーに、恋に不幸な女を物悲しく描いた歌詞、そしてガンジーの色っぽいハスキーボイスが見事にマッチするのですよね。当時のヒットチャートにおいては万人受けするようなタイプの曲ではないかもしれませんが、サビのメロディーはかなり印象的で、ラジオで何回も聴かされることで、耳にこびりついてしまったのを今でも時々思い出します。ちなみに編曲がメジャーになる前の後藤次利ですね。こんな仕事もしていたとは意外です。そんなこんなでセールス面ではオリコン最高25位ながら、22週もトップ100入りし、12.0万枚を売上げたのです。

 

 ところがガンジーはこの一曲のみで、忽然とヒットチャートから消えてしまいます。後にも先にもトップ100入りした作品はこれ一曲。あれだけ売り出しをかけて、そこそこのヒットになったにも関わらず、そのままどこかへ姿を消してしまったのです。ガンジーは実に謎のシンガー、謎のアーティストだったのです。ただ今回調べてみていくつか分かったことがあります。インドではなく沖縄出身であること、他のアーティストにも曲を南極か提供していたこと、本名が糸数元治でガンジーのアーティスト名はそこからとっていること、後に音楽プロデューサーとして活躍していことなどが判明しました。

 

 それにしても、次のヒットを狙わなかったというのは、どんな事情があったのでしょうかね。やはりガンジーは謎の存在でした。