80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.146

 

浮気な、パレット・キャット  HOUND DOG

作詞 相沢行夫、木原敏雄

作曲 相沢行夫

編曲 後藤次利

発売 19821

 

 

 

まだ方向性が定まらぬ感のあった初期ハウンド・ドッグの初ヒットとなった、春感いっぱいウキウキ化粧品CMソング

 

 今でこそ映画やドラマで俳優としての活躍が目立つ大友康平ですが、いうまでもなく80年代後半から90年代前半にかけて人気を博したロックバンド、ハウンド・ドッグのボーカルです。独特の野太く野性的な声で、男くさくて重厚なロックを熱唱し、数々のヒット曲を世に送り出してきました。ハウンド・ドッグの人気を決定づけたのは、なんといっても19858月発売のff(フォルテシモ)でしょう。彼らの代表曲ともいえるこの曲は、オリコンの最高順位こそ11位と惜しくもトップ10入りを逃したものの、売上21.8万枚とじわじわと売上を積み重ね、ヒット曲となりました。その後19879月発売Scrap Dream以降はトップ10入りヒットを連発、AMBITIOUS(19884)Only Love(198810)BRIDGE(19922月、オリコン2位、68.1万枚とハウンド・ドッグ最大のヒット)などなど、これぞハウンド・ドッグといった楽曲の数々を、ぶれずに歌い続けることで、大きな支持を得ていたのです。

 

 そんなハウンド・ドッグですが、彼らの名前が最初に世に知られるきっかけとなったのは、『ff(フォルテシモ)』発売の約3年半前に発売した『浮気な、パレット・キャット』でした。その後のハウンド・ドッグの曲を聴くと、実はこの曲は違和感を覚えるかもしれませんが、重厚で熱いというよりは、ポップで軽薄な印象のある、そんな曲だったのです。それもそのはず、『浮気な、パレット・キャット』はカネボウ’82春のキャンペーンソングでもありました。春の化粧品のCMソングなので、当然ポップで明るいウキウキするような歌が起用されるはずであり、まさか重く暑苦しい男のラブソングが化粧品のCMソングに選ばれるわけはありません。

 

 歌詞を見ても《あの娘はフワフワ仔猫 俺ら首ったけ ヤキモキFall In Love》《俺らまちぶせ 気分はハウンドドッグ だけどあの娘は すましてラナウェイ》《パッ パッ パッ パレットキャット とびきりキュート》《Yes 春風ゆられてランデブー》などなど、その後のハウンド・ドッグのヒット曲からは想像もつかない、軽薄で軟派なワードのオンパレード。ハウンド・ドッグは当時まだ無名のバンドでしたから、バンドのイメージもこんな軟派でコミカルなイメージに、世間的にはとらえられることになったのです。バンド自身、その方向性がしっかりと定まっていなかったのかもしれません。『浮気な、パレット・キャット』はオリコン最高19位、売上13.6万枚とそこそこのヒットにはなったのですが、このあとしばらくヒットからは遠ざかってしまいます。特にすぐ次のシングル『涙のBirthday(19829)は名曲といわれ、のちに人気になった曲であるにもかかわらず、トップ100入りすらしていないのです。さらに『涙のBirthday』は、のちのハウンド・ドッグのヒット曲と同じ系譜の作品でもあり、まさにハウンド・ドッグらしさがあふれた曲でもあることから考えると、化粧品キャンペーンソングに抜擢されたことで、ハウンド・ドッグが本来進むべき道から、ちょっとわき道にそれてしまったのかもしれませんね。結果的には名前を売ることには繋がったのですが、今からすると『浮気な、パレット・キャット』には、迷いとか無理とか、そんなニュアンスを感じる部分はありますね。

 

 しかしながら、1990年代前半までのヒット連発自体を終えたハウンド・ドッグは、メンバーや事務所との間で対立が生まれるようになり、バンドとしての体裁を保てなくなります。その対立は泥沼化し、完全に分裂。もう二度とバンドとしてのハウンド・ドッグがかつてのヒット曲を歌う姿を観ることはできないのでしょうか。寂しいものです。