80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.141

 

ふたりの愛ランド  石川優子&チャゲ

作詞 チャゲ、松井五郎

作曲 チャゲ

編曲 平野孝幸

発売 19844

 

 

 

男女デュエットのヒット曲としては貴重な、ポップではじける夏全開ウキウキソング

 

 1980年代における男女デュエットのヒット曲というと、その中心はまずは演歌やムード歌謡。ヒロシ&キーボー3年目の浮気』(1982)、木の実ナナ&五木ひろし『居酒屋』(1982)、都はるみ・岡千秋『浪花恋しぐれ』(1983)、小林幸子+美樹克彦『もしかしてPART2(1984)、日野美歌・葵史朗『男と女のラブゲーム』(1986)、武田鉄矢・芦川よしみ『男と女のはしご酒』(1987)、オヨネーズ『麦畑』(1989)など、コンスタントに定番曲が生まれてきていました。それでは演歌系以外ではどうかというと、Toshi&Naoko『夏ざかりほの字組』(1985)、鈴木聖美withラッツ&スター『ロンリー・チャップリン』(1987)とこの『ふたりの愛ランド』、そしてバンド自体が男女の掛け合いで成立していたバービーボーイズぐらいがある程度。ただ1990年代にはいると、中山美穂&WANDS『世界中の誰よりきっと』(1992)、松任谷由実・カールスモーキー石井『愛のWAVE(1992)NOA(吉田栄作・仙道敦子)『今を抱きしめて』(1993)、鈴木雅之・菊池桃子『渋谷で5時』(1993年、1994)、藤谷美和子・大内義昭『愛が生まれた日』(1994)、カズン『冬のファンタジー』(1995)と、ヒット曲や定番曲が結構生まれていて、80年代はこのジャンルがいかに枯渇していたかが分かります。

 

 その中でも『ふたりの愛ランド』はかなり異色で、デュエット曲の多くがマイナーでムード重視の中、メジャー曲調でムードなんか一切関係なく、とにかく元気いっぱいの楽しくて明るいデュエット曲になっているのです。なんといってもサビの《夏 夏 ナツ ナツ ココ夏 愛 愛 アイ アイ 愛ランド》は、一回聴いただけで覚えてしまうようなキャッチーなフレーズとメロディで、ここが大きかったことは間違いないでしょう。このダジャレのようなサビのフレーズを一曲の中で何回も繰り返すことで、絶大なインパクトを残し、さらに誰もがすぐに口ずさめてしまうということで、一気に広がったのです。男女デュエットでこれだけ突き抜けた明るい歌もなくて、それが新鮮だったというのもあるでしょう。さらに忘れてはいけないのが、タイアップとして、JAL’84の沖縄キャンペーンソングに起用されたこと。そのCM映像にもぴったりとはまった実に夏らしい、沖縄らしい曲で、それが毎日のように繰り返し流されるわけですから、嫌でも覚えてしまいますよね。

 

 石川優子は1981年にもJAL’81沖縄キャンペーンソングに起用された『シンデレラ・サマー』がヒットしていて、夏のイメージがついていたのも強みだったでしょう。一方のチャゲはもちろんチャゲ&飛鳥(当時はこの表記)として活動はしていましたが、この時点でのヒット曲は1980年発売の『万里の河』ぐらいで、ヒットチャート常連になっていくのは、もう少しあとになってから。この曲では、まだフォークソング系のイメージが強かったチャゲ&飛鳥から離れて、自由に伸び伸びやっているというような印象は確かに受けましたね。実際、テレビの音楽番組にも毎週のように登場し、楽しそうに二人で歌う姿を観ていると、今すぐに南の島に飛んでいきたくなるような気持ちになりましたからね。結果としてオリコン最高3位、売上43.8万枚という大ヒット曲になったのでした。

 

その後、カラオケがスナックでおじさんが歌うものから、老若男女問わず楽しむものに変わっていったとき、デュエットを歌いたいけれど演歌は嫌だという若者たちの選択肢として、この曲が選ばれることになり、長い間カラオケの定番曲として支持をされ続けることになりました。このような突き抜けて明るい男女のデュエット曲がもっとあってもいいようには思うのですがね。