80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.119

 

グッドバイからはじめよう  佐野元春

作詞 佐野元春

作曲 佐野元春

編曲 佐野元春

発売 19833

 

 

 

ビートルズになぞって、10枚目のシングルで初めて挑戦した佐野元春のバラードソング

 

 佐野元春は最初から売れていたわけではありません。初めてオリコンのシングルのチャートに登場したのは、7枚目のSugar time(19824)で、最高は77位です。今でこそ名曲であり、佐野元春の代表曲として扱われる4枚目のシングルSOMEDAY(19816)は、トップ100にも入っていないのです。佐野元春のシングルが売れだしたのは、19852月のYoung Bloodsあたりから。この曲で初めてオリコンのトップ20を突破、最高7位にまで上昇し、17.8万枚を売上げました。ただ実際の売上以上に人気はありましたし、存在感も大きかったです。

 

 1980年代の前半においては、まだまだ邦楽はダサく洋楽はかっこいい的な考え方があって、特に音楽に深く興味を持ち始める高校生あたりになると、学校などで音楽好き同士が語るアーティストは海外のアーティストが中心。そんな洋楽についてあーだこーだと大声で話すグループに対し、教室の隅でひっそりと伊代ちゃんがどーだととか、松田聖子がどーだか、肩身が狭い感じで話す23人の塊。そんな構図が1983年頃の高校の教室にはあったのですね。でも、そんな洋楽好きにとっても、佐野元春だけは別で、日本のアーティストの中ではかっこいい存在、大声で語っていい存在だったのです。

 

 私自身その頃FMラジオを良く聴いていたわけですが、実際に佐野元春はよく流れましたね。『SOMEDAY』をはじめ『ガラスのジェネレーション』(198010)『ダウンタウン・ボーイ』(198110)『彼女はデリケート』(19823)など、テレビではもちろん観たり聴いたりすることはないし、ラジオのランキング番組でもまったく登場しない曲なのに、いつのまにか耳馴染みになって、そのメロディーを歌えるようになってしまったほどです。そしてそんな風に聴いていたFMラジオから、佐野元春が、初めてシングルでバラードを出すことになりましたと、紹介されたのが『グッドバイからはじめよう』でした。さらにそのラジオで、ビールトルズが初めてバラードを出しのが10枚目だったから、それに合わせて自分も10枚目にバラードを選んだというエピソードを耳にし、それが今でも妙に印象に残っているのです。

 

 とにもかくにもリリースされた『グッドバイからはじめよう』ですが、この頃になると少しずつ佐野元春という名前も一般ファンに知られ始めていたこともあり、オリコン最高34位、売上5.5万枚と、それまでの最高成績を残したのです。アップテンポの曲は、どこか洋楽っぽい歌い方で、カッコ良いサウンドを創り出してきた佐野元春のバラードとはどんなもんだと思いきや、これがなかなかの良い曲なのです。タイトル通り、別れの場面を歌った曲なのですが、シンプルな詩の中にも、どうにもならない寂しさのようなものがあふれるように込められていて、なんともいえない哀愁を感じさせられるのです。特に《あなたはよくこう言っていた 終わりははじまり 終わりははじまり》と「始まり」というフレーズで終わるラストのところは、あとに残る余韻が半端ないのです。決して派手ではないですが、このバラードでも佐野元春の才能をきちんと伝わってきたのでした。

 

 その後1980年代後半になると、シングルリリース後に必ず購入する固定ファンが一定数に達したせいか、シングルでもオリコントップ10に入れるようになってきます。1986年~1988年あたりが、その意味では安定していた時期かもしれません。ただ、シングルとしては難しい曲も結構カットしてくるので、なかなか大ヒットには結びついてはきませんでした。そして1990年代になって、意外なところから、事故最大のヒット曲が生まれて来ることになるわけです。