80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.116

 

話しかけたかった  南野陽子

作詞 戸沢暢美

作曲 岸正之

編曲 萩田光雄

発売 19874

 

 

 

人気急上昇で1位も獲得したナンノの初めてのメジャー・チューンは、内気な女の子の片想いを歌った可愛らしい一曲

 

 19856『恥ずかしすぎて』で歌手デビューした南野陽子ですが、最初から人気があったわけではなく、デビュー曲はオリコン57位とふるいませんでした。しかしながら、同年11月スタートのドラマ『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』で、初代斉藤由貴の後を受けて、2代目麻宮サキに抜擢されると、じわじわと人気が上昇。3枚目『悲しみモニュメント』(19863)で初のオリコントップ10入りを果たし、最高6位、売上13.7万枚まで上昇。そして6枚目のシングル『楽園のDoor(19871)でとうとうオリコン1(売上26.1万枚)を獲得し、名実ともにトップアイドルとなったのでした。ただここまでの6枚のシングル曲はいずれもマイナー・チューンで、どことなく南野陽子のイメージはちょっと近寄りがたくて、影のあるイメージがつきかけていました。

 

 そんな暗い(?)イメージを払拭すべく、それまでとは雰囲気の全く違う、アイドルらしいメジャー曲で勝負をかけてきたのが、この7枚目のシングル『話しかけたかった』でした。新曲として初めてこの曲を聴いたとき、明らかに曲調を変えてきていて、ものすごく新鮮に感じたのを覚えています。春にぴったりのポップで可愛らしいメロディとアレンジ、そして決してハッピーエンドではないけれども、片想いの恋にもんもんとする女の子の気持ちが綴られた詩と、南野陽子の新しい魅力を伝えるには十分な曲になっていました。

 

 作詞は戸沢暢美。後にSMAPや嵐に多くの詩を提供していくこととなる作詞家ですが、1987年当時はキャリアのほぼ初期。提供曲であるこの『話しかけたかった』や、芳本美代子『ヴァニティ・ナイト』がオリコントップ10に入り始めた頃で、まさに作詞家としてこれからという時期でした。他の主な作詞曲としては、芳本美代子『東京SicknessCHA-CHA『僕のせいいっぱい』SMAPKANSHAして』『胸さわぎを頼むよ』『たいせつ』、今井美樹『静かにきたソリチュード』『Boogie-Woogie Lonesome High-Heel、嵐『感謝カンゲキ雨嵐』『ナイスな心意気』など。

 

 また作曲は岸正之。女性アイドルを中心にさわやかでちょっとせつない感じの曲を提供していました。他の作曲提供としては、杉浦幸『悲しいな』、高井麻巳子『木洩れ陽のシーズン』、藤谷美紀『転校生』、松本伊代『すてきなジェラシー』、松本典子『青い風のビーチサイド』、渡辺満里奈『マリーナの夏』『夏の短編』などがあります。

 

 1番の歌詞では、あこがれの彼を5月の街で見かけたものの、髪が跳ねていたために見られたくなくて、話しかけられなかったという女心が可愛らしく描かれています。当時比べられたのは、ユーミンのDESTINYでして、『DESTINY』ではいつも着飾っていたのにその時に限って安いサンダルを履いていたということだったわけですが…。さて『話しかけたかった』に戻ると、2番の歌詞ではカフェテラスですれ違ったものの、友達みんなに呼ばれて、またしても後を追えなかったという状況。そしてそのあと、雨やどりの本屋の前で3度目に遭遇するのですが、あこがれの彼はポニーテールの女の子と一緒だったというオチがつくわけですね。片想い実らずに失恋…といった、まあ悲しい歌ではあるのですが、メロディーが明るいので、どこか微笑ましく感じられるのが良かったのではないでしょうか。

 

 このあと南野陽子の人気はピークを迎えることになり、1987年から1988年はアイドルとしての全盛期になります。シングルもリリースすれば1位といった状態で、『楽園のDoor』から8曲連続、合計9曲でオリコン1位を獲得。また主演映画や化粧品のCMなど、歌以外にも引っ張りだこと、アイドル四天王といわれるその一角を占める人気ぶりでした。ただ唯一叶わなかったのはNHK紅白歌合戦への出演でした。当時の女性アイドルの多くはソロで活動していましたので、紅白の席は奪い合い。ただ1987年、1988年についてはすべてのシングルで1位を獲得しているの、出場できなかったというのは、いささか不運ではあります。1988年にはNHK大河ドラマにも出演していたというのに! ちなみに1987年、1988年に出場した女性アイドルをみてみますと、1987年が中森明菜、松田聖子、小泉今日子、荻野目洋子、1988年が中森明菜、松田聖子、小泉今日子、中山美穂、工藤静香。なかなか狭き門だったとはいえ、気の毒ではありましたね。

 

 それでも、アイドルとしての役割から卒業した後は女優として活躍、映画でヌードになって驚かせたりもしましたが、それでもまったくすれたイメージはつかず、一時バラエティにもレギュラー出演など仕事にも幅を広げ、コンスタントに芸能界で活躍し続けているというのは、さすがだと思います。なんといっても容姿があまり変わっていないのは大したものでしょう。個人的にも実は同い年、その頑張っている姿は励みにもなるもので、懐メロ番組でも結構なので、ぜひぜひ今後も活躍を続けてほしいと思っています。

 

最後に、南野陽子のシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。

1 話しかけたかった 

2 吐息でネット  

3 はいからさんが通る 

4 風のマドリガル 

5 接近 

6 あなたを愛したい 

7 フィルムの向こう側  

8 涙はどこへいったの 

9 秋のIndication 

10 さよならのめまい 

=80年代発売