80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.113
気分は逆光線 来生たかお
作詞 来生えつこ
作曲 来生たかお
編曲 星勝
発売 1982年4月
薬師丸ひろ子との競作曲のヒットで一躍注目を浴び、その勢いのままでリリースした「らしさ」満点の一曲
来生たかおが作曲した薬師丸ひろ子のデビュー曲『セーラー服と機関銃』がリリースされたのが1981年11月21日。そこからさかのぼること3週間の1981年11月1日にリリースされたのが来生たかおの『夢の途中』でした。ご存知のように、タイトルと一部の歌詞こそ違うものの『セーラー服と機関銃』と『夢の途中』は同じ楽曲です。『セーラー服と機関銃』は同名の映画のヒットもあり、大ヒットとなりますが、それにつられるように、『夢の途中』もヒットし、オリコン最高4位、売上40.6万枚という実績を残すことで、来生たかおは一躍脚光を浴びることになったのです。この1982年は来生たかおにとっては激動の年となり、この後作曲家として中森明菜や大橋純子に提供した歌も大ヒットとなるのですが(1982年の作曲家別売上年間ランキングで2位に輝きました。ちなみに1983年も7位と活躍)、そんな中でシンガー来生たかおとしてのこの年の代表曲が『気分は逆光線』です。
来生たかおといえば、やはり独特のけだるい感じのメロディーに重ねたけだるそうに歌うボーカルがなんといっても大きな個性でしょう。この『気分は逆光線』はそれが如実に表れた作品で、薬師丸ひろ子との競作で名を売ったところで、俺ってこんなアーティストだよと、まさに来生たかおを紹介する名刺代わりの一曲であったわけです。結果として、大ヒットとまではいかなかったものの、オリコン最高19位とトップ20入りし、売上も二けた14.1万枚と、『夢の途中』に次ぐ売上を残したのでした。
実は歌手としてのデビューはもっと早く、1976年にシングルデビューしていたのですが、鳴かず飛ばずの状態が続いていました。『夢の途中』は11枚目のシングルでしたが、10枚目のシングルまでは一度も、オリコントップ100に入ることはなかったのです。知られるようになった後で、名曲として来生たかおの代表曲になった10枚目のシングル『Goodbye Day』も、実はまったく売れていませんでした。そんな中での連続ヒットですから、薬師丸ひろ子の知名度を借りることになったとはいえ、ようやく掴んだヒットだったのですね。
そんな来生たかおを支えたのが、お姉さんで作詞家の来生えつこ。来生たかおの楽曲のそのほとんどで作詞を務めていて。きっとこのヒットを喜んでいたことでしょう。弟たかおが一気にアーティストとして、作曲家として売れていくのと同時に、作詞家来生えつこも、売れっ子作詞家へとなっていたわけです。さすがに弟の特徴はよく理解していたのでしょう、たかおの作るメロディーにぴったりはまる表現を選んでいるように感じます。
『気分は逆光線』での表現もまた見事で、夏の暑さの中、思うままにならない女性を、どこかけだるい感じで見つめる男の気持ちがよく表れています。最初の《今年は海へ行きたくない気分》では、いきなりその夏のけだるい感じをワンフレーズで言い表していて、いきなり来生ワールドへ引き込んでいきます。《君はときめきをかすめとった女》《逆光線の中あやしく輝いた 誰にでもそんな目をするの》《夏によろめいてまぶしすぎた》など、ちょっとすねたように斜めから見ているような感じが、とにかく来生たかおのボーカルとメロディーにはまるのです。まさに来生たかおの音楽には欠かせないパートナーといったところでしょう。そしてこんな独特の雰囲気の音楽が当時は新鮮にも聴こえ、レコードも売れたのでしょうね。
この後来生たかおはアーティストとして活動をしていきますが、シングルの売上は『夢の途中』どころか『気分は逆光線』を上回ることはなく、どちらかというと作曲家としての実績を積み重ねていくことになります。今回は最後に、来生たかおの作曲した提供シングル楽曲で好きなベスト10を選んで終わりにしたいと思います。
1 セーラー服と機関銃 薬師丸ひろ子 ★
2 スローモーション 中森明菜 ★
3 セカンドラブ 中森明菜 ★
4 語りつぐ愛に 薬師丸ひろ子 ★
5 微熱かナ 伊藤麻衣子 ★
6 シルエット・ロマンス 大橋純子 ★
7 楽園のDoor 南野陽子 ★
8 夢色のメッセージ 西村知美 ★
9 ストロー・タッチの恋 河合奈保子 ★
10 マイ・ラグジュアリー・ナイト しばたはつみ
★=80年代発売