80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.110

 

大きな恋の物語  よせなべトリオ

作詞 島武実

作曲 佐久間正英

編曲 佐久間正英

発売 19828

 

 

 

欽ドン!が輩出した、女版イモ欽トリオによる二番煎じ狙いの企画ソング

 

「欽ドン!良い子悪い子普通の子」でコントを演じた3人が組んだイモ欽トリオが『ハイスクール・ララバイ』を大ヒットさせたのが1981年のこと。そこで、同じ番組で、良いOL、悪いOL、普通のOLを演じていた生田悦子、小柳みゆき、松居直美の3人で組んで、またレコードを出しちゃえといった感じでリリースしたのが、この『大きな恋の物語』でした。結果からすると、オリコン最高8位、売上16.8万枚とそこそこのヒットに繋がり、テレビの音楽番組にも登場するなどの活躍をみせました。

 

曲自体は『ハイスクール・ララバイ』以上にコミカルな作品です。歌詞はもちろん、間奏のポンポコポンポコ的な音だったり、遊びっぽい振り付けだったり、そのあたりは変にシリアスな作品に挑戦しないで、あくまでもコントの延長といった感じで作られています。作詞は島武実。他の提供曲としてはキャンディーズ『わな』、郷ひろみ『バイブレーション』、同じ欽ちゃん繋がりのCHA-CHABeginningなどがあります。作曲と編曲は佐久間正英、こちらは有名ですね。作曲家というよりも、プロデューサーとしての活躍が目立つほか、自らもミュージシャンとして作品を発表しています。まさか、よせなべトリオの作曲と編曲に携わっていたとは、少々意外な感じもします。しかもコミックソングですし。

 

さて、よせなべトリオの3人ですが、テレビで披露するときにもそれぞれ役割があったようで、それぞれがあまり縛りもなく、適当に楽しんでいたような印象はあります。当時すでに実績のある女優であった生田悦子は、どこかいやいや付き合っているのか、照れがあったのか、振り付けは適当に流していて、ちゃんとやっていない感じでしたね。それでも許されたのは、やはり「格」が違ったからでしょうか。また普通のOLの松居直美は、この年デビューの新人歌手。まじめに普通に、言われたとおり笑顔で歌って、決められた振り付けをしてといった、至ってノーマルな対応。そして悪いOLの小柳みゆきが、お笑い担当といったところで、必要以上に大げさな動きをしたり、おどけてみせたりと、ふざけているように見せていました。考えてみればこういった役割の明確化は、コントと同じなのですね。あくまでもコントの延長、それがよせなべトリオだったのでしょう。

 

 まあ、楽曲としては特筆すべきものはありませんし、3人の話題性についても、当時のイモ欽トリオの人気に比べればだいぶおとなしい感じでしたので、番組人気の勢いでトップ10入りを果たしたというのは上出来ではないでしょうか。これ一曲でスパッと諦め、二匹目のどじょうを狙わなかったのも正解だったのでしょう、

 

さて、その後の3人ですが、生田悦子は欽ドン!のあとは本業の女優業に専念し、お笑いの世界に再び足を踏み入れるということはなかったですね。2018年に亡くなられました。小柳みゆきは小柳友貴美と改名して、こちらも女優に転身。今も現役で、ドラマなどにちょくちょく顔を出しています。そして松居直美はしばらく歌手をしていましたが、主なフィールドをバラエティ番組へ移行し、今に至っています。特に歌手であった松居直美にとっては、自身唯一のオリコントップ10入りの曲となったわけで、その点からすると、彼女にとっては大事な曲になったのかもしれませんね。