80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.98

 

い・け・な・いルージュマジック  忌野清志郎+坂本龍一

作詞 忌野清志郎、坂本龍一

作曲 忌野清志郎、坂本龍一

編曲 忌野清志郎、坂本龍一、井戸端矮鶏

発売 19822

 

 

 

資生堂のキャンペーンソングとして発売された、大物二人による奇想天外・異色の企画ソング

 

 RCサクセションの忌野清志郎、YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)の坂本龍一、それぞれ人気バンド、ユニットのメンバーとして活躍していた二人が、1982年の資生堂春のキャンペーンソングの企画でタッグを組んで発売したシングルが『い・け・な・いルージュマジック』です。奇才と鬼才による作品だけに、当然のように、作品もそれまでに聴いたことのないようなものになっていました。《Baby oh Baby い・け・な・いルージュマジック Baby oh Baby い・け・な・いルージュマジック》と繰り返す歌詞はかなりインパクト大。CMのキャンペーンソングなので、どうしてもコピーのインパクトというのは重要になるもので、繰り返し繰り返し多くの人の耳に入る部分。ただ清志郎の声で《い・け・な・い》と歌われると、実にエロティックで卑猥に聴こえてくるので、当初資生堂側がこのコピーに難色を示したというのも納得ではあります。

 

 結果からすると、この異色のユニットによる奇想天外でちょっと卑猥な『い・け・な・いルージュマジック』は大成功しました。テレビの音楽番組で歌ったときにも、圧巻の清志郎のパフォーマンスと奇抜なメイクとファッションで話題となり、曲は大ヒット。オリコン最高1位を獲得、売上も41.4万枚の実績を残したのです。ライバルのカネボウの1982年春のキャンペーンソングはハウンドドッグ『浮気なパレットキャット』で成績はオリコン19位、13.6万枚でしたから、この春は資生堂の勝ちでした。ただ夏、秋とカネボウの山下久美子『赤道小町ドキッ!、一風堂『すみれSeptember Loveの勝利というわけで、資生堂にとっては面目を保つための一曲になったのでした。

 

 歌詞は凡人にはよく分かりません。ただ共作にはなっていますが、世界感としては完全に忌野清志郎の世界です。なにせ歌詞の半分は《Baby oh Baby い・け・な・いルージュマジック》ですから。それよりも、忌野清志郎の知名度を一気にあげたことの方が大きかったかもしれません。RCサクセションというグループは、この曲が広がる前の時点では、コアなファンには熱狂的に支持されていたものの、一般的にはさほど広がってはいませんでした。シングルでの実績としては、19722月に発売した『ぼくの好きな先生』の最高70位、売上2.1万枚が最高でした。ところがこの『い・け・な・いルージュマジック』の直後の6月にリリースした『サマー・ツアー』がオリコン6位といきなりのトップ10入りを果たしたのです。

 

 一方の坂本龍一についても、YMOの最先端のテクノミュージックとはまた違った遊び心を感じる挑戦となり、一般大衆にとってより近い存在として身近に感じられる存在になるきっかけとなったことでしょう。それがやがて『君に胸キュン』にも繋がっていったのではないかと、私は勝手に考えています。

 

とにかく1982年の春、嵐のように音楽チャートをかき回した『い・け・な・いルージュマジック』は、確かに音楽界に足跡を残したのでした。