80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.89
君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。 中原めいこ
作詞 中原めいこ、森雪之丞
作曲 中原めいこ
編曲 新川博
発売 1984年4月
カネボウ化粧品のキャンペーンソングの力は絶大なり、中原めいこの名前を一気に広げたトロピカル・ラテンソング
1982年4月に『今夜だけDANCE・DANCE・DANCE』でデビューした中原めいこですが、シングルチャートに5枚目のシングルまでは、オリコンチャートに登場することもなく、一般にはあまり知られない存在でした。ところが1984年夏のカネボウ化粧品として抜擢されることで、『君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。』を歌う中原めいこは一気にブレイクを果たしたのです。
当時、化粧品のキャンペーンソングに使われるということは、一定以上のヒットを約束されたようなもので、歌手にとってはこれ以上ないという大チャンスであり、広告代理店から指定された奇抜なタイトル『君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。』に従って作った曲で、中原めいこは見事にこのチャンスをものにしたのでした。カネボウ化粧品の1980年代にはいってからのキャンペーンソングの主な曲としては、1980年渡辺真知子『唇よ、熱く君を語れ』、郷ひろみ『How manyいい顔』、1981年矢野顕子『春咲小紅』、ヴィーナス『キッスは目にして!』、1982年山下久美子『赤道小町ドキッ』、一風堂『すみれSeptember Love』、1983年YMO『君に、胸キュン。』、横浜銀蝿『おまえにピタッ!』、1984年松田聖子『Rock’n Rouge』など、かなりのラインアップで、その次が『君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。』となるわけです。ちなみにライバル資生堂の1984年夏のキャンペーンソングは大沢誉志幸の『その気×××(mistake)』でしたから、1984年の夏に限れば、カネボウに軍配が上がったというようなところでしょうか。
さてこの『君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。』ですが、よくもまあこの南国のフルーツを並べた奇抜なタイトル制限を上手に料理したなという感じですね。歌詞もそれに合わせたような、南国リゾートムードが満載。南国ビーチでフルーツカクテルでも飲みながら、夏の恋に熱くなっているちょっと高飛車な感じの出で立ちの女性の姿が目に浮かんできます。《ドライなシェリー ちょっと誘われて》《灼けつく恋の食前酒(アペリティフ)》《咲かせましょうか果実大恋愛(フルーツ・スキャンダル)》《煙草は薄荷(メンソール)火を貸しただけ》《肌をくすぐる渚の視線》…と、夏の化粧品キャンペーンにはもってこいなワードを並べて、サビで《君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね》ですから、やはりインパクトは絶大です。そんな言葉たちを乗せる曲は、ラテン・ポップ調でこれまた南国のムードを盛り立てるメロディーとアレンジということで、一発注目を浴びるには十分な作品となったわけです。
その結果として『君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。』はオリコン最高8位、売上23.7万枚のヒットとなり、中原めいこの知名度は一気にアップ。それまではオリコンのトップ100にも入らなかったアーティストだったのが、それ以降のシングルは軒並みオリコンにランクインと、中原めいこ自身のアーティスト人生をも大きく変える一曲となったのでした。
その後は『君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。』を超えるヒット曲こそ出ませんでしたが、オリコントップ10入りということでは『鏡の中のアクトレス』(1988年1月)が8位を記録、売上10万超えということでは『ロ・ロ・ロ・ロシアン・ルーレット』(1985年7月)が11.7万枚と、80年代を中心に活躍を続けます。ただしその後は音楽活動も次第に尻すぼみになり、2000年代後半にはひっそりと音楽活動をやめてしまったようです。懐メロ番組なんかに、たまには顔を出してほしい気持ちもありますが、当時のイメージのままで残しておきたいという思いも一方であったりして、そのあたりは複雑ですね。