80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.79
BE MY BABY COMPLEX
作詞 吉川晃司
作曲 布袋寅泰
編曲 布袋寅泰
発売 1989年4月
二大巨頭並び立たずに再び挑戦した布袋の選んだ相手は吉川!伝説的且つ曰く付きユニットの1stシングル
BOØWYを解散した一人になった布袋寅泰と、アイドルからロック歌手への脱皮を図ろうとする吉川晃司が組み、2年に持たない活動で休止となった伝説のユニットがCOMPLEXです。このCOMPLEXについては、あとになっていろいろと明るみになってきたことがあって、ある意味曰く付きのユニットでもあります。友人同士だった二人が組んだものの、最後は喧嘩別れとなって終了したということで、やはり主張の強いアーティスト同士が組んでも、結局は衝突し合ってうまくいかないということなのでしょう。吉川晃司はもともとソロでやってきていた人なので、そのあたりは初めての経験だったかもしれませんが、布袋寅泰にとってはBOØWYでも体験していたこと。二大巨頭は並び立たないと分かっていたようにも思うのですが…。もっともその後和解したようで、2011年に2日間限定で、復活ライブを行ったということは、当時嬉しいニュースとなりました。
さて、そのCOMPLEXとしてのデビュー曲としてリリースしたのがこの『BE MY BABY』で、今でもこの曲はCOMPLEXを象徴する一曲として、強く印象づけられています。実は私、吉川が大好きで、男かに抱かれるなら吉川しかないと思っていたほどでした。その吉川が布袋と組んで新しいことをすると聞いたものですから、このデビュー曲には大きな期待を持っていたのですが、正直なところ、最初にこの曲を聴いたときは、ちょっと期待外れの感はあったのです。いきなり最初から《Be My Baby》の繰り返しで、目立つのは布袋のギターばかり。なかなか「本題」に入らない感じ。ようやく本題にはいったと思えば、ありふれた愛の言葉をちょこっと歌ったと思うと、サビの部分でも《Be My Baby》…。何だこりゃです。それまでの吉川の曲でもなければ、もちろんBOØWYの曲でもない。二人はユニットを組んでまでしたかったこととはこれなのか、こんな中身のない歌詞の単調な曲を聴かせたかったのか、そんな気持ちだったのです。
ただ、この何度も繰り返す《Be My Baby》…のフレーズは、一度聴いてしまうと、とにかく忘れないのです。そしてそれと同時に、白い背景の中で吉川が歌い、布袋が弾き、そして二人が踊るシンプルながらインパクト絶大のPVが映像として目に浮かんでくるのです。そういう意味では、これから始まる新しいユニットのオープニング曲のプロモーション・ミュージックとしては、実は非常に良くできた曲であったのだと、あとになって気づかされるのです。共感と感動を呼ぶような歌詞や、日本人の琴線に触れるようなメロディーよりも、とにかくインパクトがあってかっこよい音楽をまずは見せたい、そんなメッセージだったように、今となっては思うわけです。
シングル『BE MY BABY』が発売されたのが4月8日、そして同じ月4月26日にはファーストアルバムが発売され、タイトルは『COMPLEX』。この流れやタイトルを見ても、力が入った一大プロモーションであっただろうことが想像できます。そしてその甲斐もあって、シングル『BE MY BABY』、アルバム『COMPLEX』ともに、オリコン1位を獲得したわけなのです。特にアルバム収録曲の『恋をとめないで』はCOMPLEXとしては貴重なポップで歌いやすい曲で、テレビドラマ『白鳥麗子でございます!』にも使用されたこともあり、今でも人気曲となっています。
このようにCOMPLEXは順調なスタートを切り、商業的にもうまくいったのですが、冒頭のように二人の関係が続かずに、シングル2枚、オリジナルアルバム2枚で活動を終えてしまいます。2枚目のシングル『1990』もまたかっこいい曲で、個人的には『BE MY BABY』よりもずっと好きな曲でした。これもオリコン1位を獲得し、結局は最後のシングルになったまま、今に至るというわけです。COMPLEXから再びソロに戻った二人は、それぞれ1990年代にはヒット曲も出し、現在に至るわけで、それぞれの道で今もなお活躍している姿を見ると、COMPLEXというユニットは、なにか幻の存在だったような気持ちにさえなってしまうのです。