80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.75
ON THE MACHINE(翔と桃子のロックンロール) 杉本哲太&LONELY RIDERS
作詞 牧野和子
作曲 Johnny
編曲 T.C.R.横浜銀蠅R.S.
発売 1982年5月
銀蠅一家の次男坊が、所属本体の紅麗威甦とは別に、兄貴たちをバックに従えてリリースした企画シングル
1982年1月『ぶりっこRock‘n Roll』でデビューした紅麗威甦のボーカル杉本哲太。横浜銀蠅の長男嶋大輔に続き、次男坊として売り出しをかけてきたのが1982年になります。この『ON THE MACHINE(翔と桃子のロックンロール)』は、杉本哲太をメインに紅麗威甦とは別形態のバンドとして
1982年5月にリリースした、一発限りのいわば企画物のシングルレコードになります。LONELY RIDERSなるバンドですが、言ってしまえば横浜銀蠅の面々のことです。嵐、翔、TAKUが楽器やコーラスで弟分をサポート、同じく銀蠅のJohnnyは作曲を担当し、全面的に兄貴分たちがバックアップした作品なのです。
この『ON THE MACHINE(翔と桃子のロックンロール)』ですが、横浜銀蠅のサポートということ以上にポイントとなるのが、タイトルの括弧書きの「翔と桃子のロックンロール」の部分です。翔と桃子というのは、当時人気のコミック『ハイティーン・ブギ』の主人公の高校生カップルのことで、作詞を担当したのが『ハイティーン・ブギ』の作者である牧野和子なのです。ちなみにB面が紅麗威甦の歌う『桃子の唄』ということで、完全に『ハイティーン・ブギ』とのタイアップ企画のシングルとなっているのです。
しかしそうなると、当然「ん?」と思うのは、映画『ハイティーン・ブギ』と、主演の近藤真彦が歌うその主題歌『ハイティーン・ブギ』の存在です。シングル『ハイティーン・ブギ』の発売が1982年6月、映画『ハイティーン・ブギ』の公開が1982年8月と、『ON THE MACHINE(翔と桃子のロックンロール)』と同時併行で進んでいるタイミングなのですよね。結局この年『ハイティーン・ブギ』の大々的なプロモーションが行われていたということなのでしょうね。コミック『ハイティーン・ブギ』自体、主人公が暴走族のリーダーですし、その名前も“翔”とくれば、当然当時人気絶頂の横浜銀蠅一家に白羽の矢が立つのは当然の成り行き。それなら若い杉本哲太のイメージにぴったり合うのではないかと、企画されたのもある意味納得なのですね。
歌詞も作者自身が書いているので、その内容がコミックの世界と一致するのも当然のこと。冒頭いきなり《オレんとこ来ないか?》というセリフで始まり、そこからは銀蠅ロックおなじみの演奏がスタート。お世辞にも上手とはいえない哲太の不器用なボーカルも、どこか朴訥な感じで、『ハイティーン・ブギ』の世界観と合うのでしょう。そのあとは、バイクの後ろに桃子を乗せて夜の浜辺を突っ走る翔、《海辺に着いたら甘くキスして》と、完全に二人きりの世界に。《海辺にバイクをとめて》で始まる近藤真彦の『ハイティーン・ブギ』ともこのあたりはリンクしてきますね。
そんな大々的なプロモーションとの相乗効果もあってか、『ON THE MACHINE(翔と桃子のロックンロール)』はオリコン最高7位、売上19.8万枚と、そこそこのヒットになるのです。もちろん企画物なので、この形態でのシングルはこの一曲のみ。ふたたび紅麗威甦としての活動に帰っていくわけですが、翌1983年、また別形態でのシングルを発売することになるのです。その話はまた別の機会で触れることにします。
それにしても当時、今の杉本哲太の活躍ぶりを想像した人はいたでしょうか。歌は粗野でうまくない、顔を強面で所詮銀蠅の二番煎じ、長くは続かないだろうと踏んでいたのですが、ところがどっこい、俳優として長きに渡り一線で活躍を続けているのが現在の杉本哲太なのですね。今の俳優の姿しか知らない世代にとっては、びっくりの過去ではないでしょうか。たまにはこの頃の歌をテレビなんかで見せてほしい思ったりもしてしまいますが、どんなものでしょうかね。