80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.70
サンセット・メモリー 杉村尚美
作詞 竜真知子
作曲 木森敏之
編曲 木森敏之
発売 1981年1月
テレビドラマ『炎の犬』の主題歌に起用されて大ヒット、フォークグループ日暮しの元ボーカルとして、解散後の唯一のソロヒットシングル
1981年1月発売の『サンセット・メモリー』は、日本テレビのドラマ『炎の犬』の主題歌にも使われ、オリコン最高4位、売上46.1万枚の大ヒットとなり、この曲を歌う杉村尚美は、毎週のようにテレビの歌番組に出演していました。
もともと杉村尚美は、フォークグループ「日暮し」のボーカル、キーボードの榊原尚美として活躍、1977年に発売された『い・に・し・え』がオリコン14位、売上21.9万枚のヒットとなりましたが、1979年に解散していました。その後しばらく間を空け、さらに名前を変えて、ソロデビューを果たしたのがこの『サンセット・メモリー』だったのです。そしてこれが見事にヒットということで、グループ以上のヒットとなったわけです。
さてこの杉村尚美ですが、ソロとしても、グループとしても、それぞれ見事なほどの一発屋力を発揮しています。俗に一発屋と言われる歌手は、無名だったり、デビューしたてだったのが、突然ヒットに恵まれるわけで、それ以前に全く実績がないというのはよくあることですが、普通その次に出した曲は、知名度があがることで、売れなかったといってもそこそこの売上にはなってくるものです。ところが日暮しというグループにとっても、ソロ歌手杉村尚美にとっても、前述のヒット曲以外に、オリコントップ100にランク入りした曲がないのです。きれいさっぱりな一発屋なのです。もちろん杉村尚美の参加した曲としては2発屋にはなるのですが、それにしても日暮しは前後に何曲かレコードをリリースしていますし、杉村尚美も1982年に2枚目、3枚目を発売しているのです。そういった点で、アーティストパワーではなく、ほぼ100%楽曲のパワーに因ったヒットであったといえるのでしょう。
そんな『サンセット・メモリー』ですが、作詞は竜真知子。他のヒット作としては一風堂『すみれSeptember Love』、狩人『あずさ2号』『コスモス街道』、サーカス『Mr.サマータイム』『アメリカン・フィーリング』、石川秀美『バイ・バイ・サマー』『スターダスト・トレイン』『夏のフォトグラフ』、河合奈保子『スマイル・フォー・ミー』『ラブレター』『夏のヒロイン』、キャンディーズ『ハートのエースが出てこない』、桑江知子『私のハートはストップモーション』、西城秀樹『リトルガール』『南十字星』などなどがあります。作曲は木森敏之で他の作曲の実績としては、岩崎宏美『聖母たちのララバイ』『家路』、中村雅俊『心の色』、渡辺徹『愛の中へ』などがあります。いずれにせよ、プロの作詞家、作曲家がドラマに合う曲をということで仕上げた曲が、見事にはまったということなのでしょう。詩の内容は普遍的でいつの時代にも合うような愛の歌でありますし、曲も誰もが口ずさめるようなわかりやすく覚えやすい曲で、まったく奇を衒ったところはありません。今からすると、ここまでのヒットになったというのが不思議に思ったりもするのですが、ドラマとの相乗効果が大きかったのでしょうね。
杉村尚美という歌手ですが、なかなかおきれいな人で、当時の歌番組では、10代のアイドル歌手や妖艶な演歌歌手の中では、やや異彩を放っていて、それがまた当時は新鮮に映った覚えがあります。また、そのボーカルはやや裏声に近いような綺麗な声で、やや不安定な感じが特徴でもあり、けっして歌が上手というわけではなかったのですが、印象に残る歌声でした。その後はほとんどメディアに出ることもなく、引退して一般人として生活しているようです。