80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.67

 

NATURALLY  藤井尚之

作詞 松本隆

作曲 藤井尚之

編曲 後藤次利

発売 198710

 

 

 

80年代終盤にチェッカーズから次々にソロデビュー、その先駆けとなった藤井弟の貫禄の1stシングル

 

チェッカーズの人気の中心にあったのが藤井ブラザーズですが、ボーカルで甘いマスクの兄郁弥に対し、一歩二歩引いた位置でサックスを演奏し、クールなイメージの弟尚之。ボーカルの郁弥が最初にソロデビューしてもインパクトはないでしょうし、普段歌声を披露しない尚之の方がインパクトがあるだろうと思ったかどうかは分かりませんが、翌年ソロデビューする兄郁弥や鶴久政治、高杢禎彦らに先駆けて最初にソロデビューしたのが藤井尚之だったのです。

 

さすがに人気者、このソロ1stシングル『NATURALLY』はオリコン2位を獲得し、まずはソロとして順調なスタートを切ったのでした。作詞が松本隆、編曲が後藤次利ということで、作曲だけを自身が務めて、得意でない部分は専門家のヒットメーカーに依頼し、力が入っているのもそれだけでわかります。チェッカーズでは歌わないような曲、合わせて自身のイメージと合致して名刺代わりになるような曲ということで、作られたのがこんな感じの曲だったのでしょうね。

 

確かにクールだし、かっこいいです。歌はボーカルではないので、まあこんなものでしょう。ただ、メロディとしては売れ線ではないですし、歌詞もイメージ重視といった感じで、プロの作詞家らしいかっこいい言葉が並びますが、心情に訴えるような歌詞ではないです。まさに藤井尚之のプロモーション・ミュージックのような、そんな雰囲気の作品なので、基本的にはファンの人が買ってくれればそれでいいという感じに受け取ったのですが、どんなものでしょう。

 

ただ起用されたCMがライオンの洗顔料ということで、『NATURALLY』という単語は、当然そこも意識されたものではあったのでしょう。《自然に抱きあえばいいさ》《心の動きにまかせて》《まがいのジュエルを外しな》《君には飾りはいらない》と、ようするに自然体で、ということなのですが、どこか上から目線なのが、藤井尚之的だと感じます。これが鶴久政治だったら、《ジュエルを外して欲しいな》《飾りはいらないと思うよ》と、もっと下手な感じになるのでしょうが、やっぱり尚之は上から目線なのでしょう。

 

ただ尚之自身に、ソロ歌手としての活動への意欲とかこだわりとか、どこまであったのかは疑問で、

その後のソロシングルのリリースは散発的になっています。翌1988年に2ndManhattan3rd『クローム・メタリック』と出し、それぞれ8位、15位という結果を残した後、ソロシングル4弾は1995年とだいぶ先になります。そこから2001年までの7年間で8枚というゆっくりペースでリリースしますが、特にヒットもせず、それ以降はシングル曲をほとんどリリースしていないようです。ただアルバムについては実はコンスタントに出し続けていて、そのあたりはアーティストとしてのこだわりなのでしょうね。シングル1枚では自分のやりたいことを表現できないということなのでしょうか。ソロでも大ヒットを飛ばしたお兄さんに比べると、地味な印象にはなってしまいます。