80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.60

 

青い靴  芳本美代子

作詞 松本隆

作曲 筒美京平

編曲 船山基紀

発売 19866

 

 

 

アイドル御用達のヒット曲請負コンビ松本隆&筒美京平作詞作曲で、ミッチョン初のトップ10入りを果たした6thシングル

 

19853月に『白いバスケット・シューズ』でデビューしたミッチョンこと芳本美代子。1985年デビュー組はわりと強力で、おニャン子クラブ、斉藤由貴、中山美穂、本田美奈子、南野陽子、浅香唯、井森美幸、森口博子、石野陽子、松本典子らがいました。デビュー曲のオリコン最高位は22位でしたが、2枚目『プライベート・レッスン』18位、3枚目『雨のハイスクール』15位、4枚目『アプリコットキッス』16位、5枚目『心の扉』12位と、少しずつ順位を上げてきていました。ここまでの曲はすべて作詞が松本隆ということで、作曲者は井上大輔、財津和夫、宮城伸一郎で曲調は異なるものの、いずれも正統派のアイドルソングで攻めてきています。実はこの頃の曲はなかなかの佳曲が揃っていて、歌唱力は正直なところイマイチなのでちょっと損しているところはあるのですが、アイドルソングとしては5曲とも出来が良いものになっています。

 

 このようにあと一歩でトップ10入りという状況で発売したのが6枚目のシングル『青い靴』で、作曲者に切り札ともいうべき筒美京平を起用することで勝負をかけてきたのです。そして結果として、オリコン週間10位と念願のトップ10入りを果たし、人気アイドルへの仲間入りとなったのでした。この『青い靴』もそれまでの曲とはまた違ったタイプの曲ですが、アイドルらしい可愛い曲になっています。《Dancing Dancing 躍らせて》で始まり《Dancing Dancing 真っ白なドレスが素肌にはりつく》で終わっていく歌詞は、嫉妬と怒りのままディスコで踊り続ける状況を歌っていて、汗をかきかき、無心になりたくてただただノンストップで踊り続けている様子を想像させます。《Dancing Dancing》が何回も一定のリズムで繰り返されることが、さらにノンストップ感を増長させて、いい感じです。

 

 彼女が踊っているのはディスコであることは間違いないでしょう。他にもたくさん客がいるようです。《(一人なの?)かまわないでよ (振られたの?)余計なお世話》一人で踊っているところに、声をかけてくる男の子たちがいるようですが、彼女は興味がないようです。《あなたは別の誰かと 違うステップ踏むのね》と、どうやら同じフロアで彼氏なのか元彼氏なのか片想いの相手なのか、その「あなた」も踊っていいるようです。《なぜあんな人にだけまなざしがさらうのよ》と気になるのは「あなた」だれなのようです。2番になると《ハンサムな子の背中に 両手まわして踊るわ》と、いわゆるチークタイムなのか、別の男の子を見つけて踊っているようなのですが、《肩ごしに目があえば 嫉妬してくれるかしら》と、やはり「あなた」に対して見せつけるためにわざとしているようです。そこからはひたすらDancing Dancingで《電気仕掛の人形みたい 音が止んだらもう動けない》とひたすら踊り続けて、曲は終わっていきます。「あなた」との関係性がややぼかされているので、そこもいろいろ想像をめぐらせることができて、楽しいところです。喧嘩したばかりの彼氏なのか、好きなんだけれどもなかなか彼氏彼女にはなれないでいる相手なのか、おそらくそのあたりだとは思うのですが、そこのはっきりしない感じがやきもき感にもなって、聴いている側もいつのまにか同化していくのです。このあたりは松本隆のわざだといえるでしょう。ディスコで好きな男の子が別の女の子と踊るのを、自分は別の男の子と踊りながら見ている…これは同じ松本隆&筒美京平による『魔女』(小泉今日子)と同じなのですけどね。

 

 さてこの曲でトップ10入りした芳本美代子は、このあと同じ『青い靴』の12インチシングルを除き、5曲連続でオリコントップ10入りを果たし、彼女のキャリアにおける人気絶頂期を迎えます。Auroraの少女』(19869)でキャリア最高の売上7.9万枚、『ヴァニティ・ナイト』(19873)で最高順位5位の実績を残しますが、1987年秋以降、次第に売上は低下していきます。ただ芳本美代子の残念なところは、売れていない時の方が、いい曲を歌っているということです。トップ10に届かないようになってからは、多少歌唱力も改善されてきて、大人の歌も歌うようになってきたのですが、この中にも結構佳曲があるのですよね。そこがちょっと不思議なところではあります。今も引き続き芸能界で活躍を続けています。

 

 

最後に、芳本美代子のシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。

1 青い靴 

2 心の扉 

3 涙のイヤリング

4 アプリコットキッス 

5 雨のハイスクール 

6 恋するブランニュー・デイ 

7 白いバスケット・シューズ 

8 プライベート・レッスン 

9 横顔のフィナーレ 

10  サカナ跳ねた 

=80年代発売