80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.59

 

パヤパヤ  レピッシュ

作詞 MAGUMI & 狂市

作曲 狂市

編曲 レピッシュ

発売 19879

 

 

 

スカを取り入れたバンドとして、日本で初めてヒットチャートに食い込んできた挨拶がわりの一曲

 

 1980年代後半のバンドブームによって、それまで日本においては一部のコアなファンのものであった新しい音楽が、次々に大衆へ広がっていったことを、別の回でちょっと触れましたが、レピッシュについても、そんな新しい音楽としての“スカをポピュラーなものに変えていったという功績を残したバンドのひとつといっていいように思います。レピッシュという存在は、必ずしも当時の誰もが知っているような大衆的なメジャーなバンドであったわけではないですが、音楽好きが選ぶ人気バンドのランキングなどでは、必ず上位に顔を出してくるような、そんな位置づけにあるバンドだったように思います。

 

 レピッシュというバンドの生い立ち自体がちょっと変わっていて、テクノバンドとパンクバンドが合体してひとつのバンドになったという経歴があります。それゆえに、いろいろな音楽をとりまぜたような独特の音楽を産み出していたのですが、その中でスカとかファンクとかを主体に、一方で普段歌謡曲を聴いているよう層にもすっと入っていれるようなポップスな要素も散りばめて、新しいファン層を取り込んでいったような印象です。日本におけるネオ・スカバンドの元祖的な存在として語られることもあるようですが、彼らのメジャーデビュー曲『パヤパヤ』は、そんな彼らの特徴をギュッと詰め込んだ、名刺代わりの一曲となったのです。

 

 この曲はメジャーデビュー曲にもかかわらず、トヨタのスターレットのCM曲にも使われたということで、それがきっかけでより多くの人の耳にするところにもなったのです。テレビをつけていれば誰でも耳にする機会があるということで、曲のほうも誰もが抵抗感もなく聴けるようなものを選んだきたということはあるでしょうが、とにもかくにもこの『パヤパヤ』は、デビュー曲ながらレピッシュの中で最大のヒット曲となったのです。オリコンでは最高13位、売上8.0万枚というのは、当時の日本において新興音楽といってもいいようなジャンルを取り入れた曲としては、大健闘といっていいように思います。

 

 歌詞については、けっして一般的にわかりやすいような内容ではなく、むしろそのよく分からない感じがかっこいいみたいなところがありました。とにかく曲に合わせて、雰囲気の合う言葉がうまく乗ってくれれば、深く考えずにあとはリズムで楽しめちゃう、そんなところだったのでしょう。このあたりの紙一重のセンスは、他のバンドにはまねのできないところでした。《時計の針は今日も僕を好き》《目覚めれば僕は 服を並べ 髪を突き上げ》このあたりはよく分りませんが、結局《踊れ 騒げ パヤパヤ》で、まあ、どうでもいっか、というようになってしまうのです。

 

 この曲で認知度を広げたレピッシュは、3枚目のシングルRINJIN(8912)が、かなり個性的な曲にもかかわらず、24位・6.7万枚とこれも一定の支持を受けました。さらに4枚目Magic Blue Case(909)5枚目『ハーメルン』(911)はともにトップ20入りと、チャート上位をうかがおうかという活躍を見せましたが、バンドブームが沈静化していく中で、売上も低下していくのでした。その後はメンバーが変わったり、一時活動休止もあったり、メンバーが亡くなったりと、いろいろありながらも、不定期に活動しているようです。