80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.50

 

恋のロープをほどかないで  新田恵利

作詞 秋元康

作曲 後藤次利

編曲 後藤次利

発売 19864

 

 

 

おニャン子クラブの人気ナンバー1が、大ヒットデビュー曲の勢いのままにリリースした初夏の爽やかな恋愛ソング

 

 私は新田恵利とはいわゆる同学年ということになるのですが、なぜ彼女は人気があるのか、当時はあまり理解できませんでした。多分きっと、タイプではなかったのでしょうね。それでもそれとは関係なく、新田恵利はおニャン子クラブの前半においてはナンバー1の人気を誇っていました。ソロデビュー曲『冬のオペラグラス』はいきなり大ヒット、いとも簡単にオリコン1位も獲得、とにかく勢いに乗っているそんな時期に発売した第2弾シングルが『恋のロープをほどかないで』でした。

 

 『冬のオペラグラス』は実はなぜこんなにヒットするのか、歌も大した歌じゃないのにと、実は首をかしげていた私でしたが、この2枚目のシングルは実はなかなかのお気に入り。新田恵利の出したシングルの中では、一番好きな曲でもあるのです。作詞は秋元康、作曲は後藤次利のゴールデンコンビということで、初夏の海を感じさせる爽やかでかわいい恋愛ソングになっています。このコンビによる新田恵利へのシングルは、意外にもこの2枚目『恋のロープをほどかないで』のと、次の3枚目のシングル『不思議な手品のように』2曲だけ。ただこの2曲は、新田恵利のシングルの中では、なかなか出来だと思っています。

 

当時私の2コ上の先輩が3枚目の『不思議な手品のように』が大好きだったのですが、なかなか賛同してもらえずに、どこか寂しそうでした。そこで私が「僕も結構好きですよ」というと、ちょっと嬉しそうな表情をして「だろっ?」と言ったのを今でも覚えています。実は今回どちらの曲を取り上げるが迷いまして、歌詞については『不思議な手品のように』も面白いし、どうしようかなとは思ったのですが、夏にはちょっと早い海でじゃれあう光景が浮かぶような『恋のロープをほどかないで』がさわやかで好きだったなと、最終的にこちらを選択しました。なにせ、1アーティスト1曲のルールなので。いずれにせよ、『恋のロープをほどかないで』や『不思議な手品のように』など明るく可愛い曲を歌っている新田恵利は確かに可愛くみえましたし、彼女に合っていたのはこんな曲じゃなかったかなとは思っています。

 

冒頭の《恋のロープをほどいちゃだめだめ》の♬だ~めだ~~めで、新田恵利のファンだったらいきなりノックアウトされてしまうのではないでしょうか。舌足らずの声で拙いながらも健気に歌われたら、これはかなり殺人的です。それがサビの都度出てくるのですから、もう参ってしまいますね。多分計8回、一曲の中で歌われています。《コットンのシャツを少しまくって 海の雫をそっとすくえば まだ冷たいねと肩をすぼめた》《砂浜の小さな舟 縁に腰かけて 右手をかざしながら 夏を待っていた》など夏の前の海辺であなたと私という状況が明確にされていますが、これがまたドキドキさせます。おそらくそんな時期ですから、人影もまばらでしょう。あなたのことしか見えない、考えられない、まさに二人だけの世界が形成されている中で、幸福感も上昇中。夏に向かって二人の仲はさらにどうなっていくの?というワクワク感、ドキドキ感が歌われていて、このあたりは秋元康、心憎い詩を書き上げていますね。

 

そんなこんなで『恋のロープをほどかないで』も売れまして、オリコン1位、売上は28.4万枚、前作(『冬のオペラグラス』)89%と大健闘でした。このあたりまでが新田恵利の人気のピークだったといえるでしょう。このあとおニャン子クラブは新しいメンバーも加わっていき、人気の中心は新田恵利、国生さゆりから、W渡辺へと移っていきます。新田恵利個人としてのオリコン1位獲得曲は、4枚目の『内緒で浪漫映画』まで。5枚目『若草の招待状』が最高3位で売上も万枚を切ってきます。6枚目『サーカス・ロマンス』は8位と、トップ10入りはここまで。この4枚目から6枚目の作曲家が尾崎亜美、高見沢俊彦、小林亜星とかなり個性的な作家陣だったのも面白いです。

 

 その後は芸能界から遠ざかった時期もありますが、最近はまたちょくちょくテレビでもみかけます。特に昔のアイドル特集なんかでおニャン子のメンバーが呼ばれるときは、必ずといっていいほど顔を出しますね。それだけ、一世を風靡したおニャン子クラブというグループの象徴的存在が、新田恵利だったわけなのですね。その意味で新田恵利は、短い期間であっても、芸能界に確かに爪痕を残したのでした。