80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.48

 

 

あいにきてIneedyou!  GO-BANG‘s

作詞 森若香織

作曲 森若香織

編曲 白井良明、GO-BANG‘S

発売 198912

 

 

 

ブレイク前夜の3人組ガールズバンドによる、1980年代の最後の最後の年末に世に放たれたコケティッシュなラブソング

 

 この『あいにきてIneedyou!』が発売されたのは19891227日と、1980年代もまさに終わろうとしているぎりぎりの時。GO-BANG‘Sは女性だけの3人組バンドとして1988年にメジャーデビュー。日本に音楽界もようやく女性だけのバンドが、プリンセス・プリンセスやSHOW-YAなど、チャート上位に顔を出すようになった頃で、その流れの中でGO-BANG’Sも登場してきたのです。19894月に発売した『スペシャル・ボーイフレンド』がCMにも起用され、初めてオリコンのトップ100に入る55位を記録。その次に発売されたのが『あいにきてIneedyou!』だったのです。勢いに乗って、1990年代最初のヒットでも狙おうかと、気合の入ったシングルだったのです。

 

 なんといってもスキーのアルペンのCMソングとして使われたのが大きく、のちに広瀬香美もアルペンのCMをきっかけにブレイクするなど、影響力の大きなCMでした。『あいにきてIneedyou!』が流れるCMには、アイドル歌手の松本典子(実は好きでした)と人気俳優の真木蔵人がシリーズで登場し、その可愛らしい映像とGO-BANG‘Sのコケティッシュな歌が見事にはまって、『あいにきてIneedyou!』は一気に広がったのです。オリコンでは週間最高2位を獲得し、売上も37.8万枚と大ヒット、GO-BANG’Sはとうとうブレイクを果たしたのです。

 

 GO-BANG‘Sは3人組ではありましたが、基本的にはほとんどの曲の作詞・作曲とボーカルを担当していた森若香織の個性と才能に頼ったバンドでした。実際に結成時から解散まで残ったのも森若一人で、その意味ではワンマンバンドといってもいいのかもしれません。その森若が作り出す可愛らしいけれどどこかコミカルな歌と、そんな歌に見事にマッチしたこれまた可愛らしくてコミカルな独特の歌い方と声が特徴であり、その点では他のどのバンドにもない個性を持っていました。GO-BANG’Sの曲は、女性でないとかけないし歌えない、しかもプリンセス・プリンセスやSHOW-YAらとは対極にあり、そんな中でも『あいにきてIneedyou!』はGO-BANG‘Sの個性を最大限に生かした作品になっていたのです。

 

 彼女がいるのに思わせぶりにモーションをかけては透かしてみたり、電話をかけてきたと思えばしばらくやめてみたり、自分はその男のコのことを大好きなのですが、彼女にはなりないそんな不満や拗ねる気持ちがいじらしく歌われている歌詞は、森若香織が歌うたと、どこかコミックソングのようにも聴こえてきます。そこにサビで何回も何回も繰り返される《あいにきて I NEED YOU》が耳にこびりついて、一度聴いたらもうこのサビは忘れないでしょうと思うほどの中毒性をこの曲はもたらせます。何回も何回もその部分をCMで聴けば、気にならずにはいられませんね。ヒットするのも必然の成り行き、とういより戦略だったということです。

 

 ただ強い個性は、逆に飽きも早くきてしまうもので、この独特な声と作風は、どの曲も似たような感じに聴こえてしまうという不利点もあったように思います。次のシングル『無敵のビーナス』(19904)こそオリコン8位、売上10.5枚を記録しましたが、オリコントップ10入りはこの2曲のみ。1992年発売の『ちょっとだけハイカラ』を最後に、トップ100からも姿を消してしまいました。ただ森若香織は他のアーティストに曲を提供したり、女優業に挑戦したりと、今もいろいろな形で活動を続けているようです。