0年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.47

 

Remember  風間三姉妹

作詞 湯川れい子

作曲 来生たかお

編曲 中村哲

発売 198710

 

 

 

1+1+13になるのか!? スケバン刑事Ⅲの三人娘が集まって歌った一曲限りの企画ユニットシングル

 

 当時人気のドラマシリーズの第3弾『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』の主題歌を、三姉妹を演じる浅香唯、大西結花、中村由真が一緒に歌ったのがこの曲です。役名をそのまま使った「風間三姉妹」をユニット名にしており、あくまでもドラマのための企画ユニットという形での発売となりました。ドラマの第1弾、第2弾はそれぞれ斉藤由貴、南野陽子が主演し、一人で戦っていたのですが、第3弾は主演の浅香唯に加え、それを支える形でさらに二人のアイドルを起用したことで、どうせなら3人一緒に歌って曲を出しちぇえぱ、売れるんじゃない?という発想だったのでしょうね。

 

 この『Rember』を発売した時点での3人を見ると、中村由真はこの年に歌手デビューしたてのほやほやルーキーアイドル。大西結花はデビュー3年目で売上が急上昇し、初のオリコントップ10をこの年果たしたばかり。浅香唯もデビュー3年目の年で、初めてのオリコントップ10もナンバー1も、この年に達成したばかりと、まさに人気急上昇中といった状況でした。実は番組自体は前年1986年の秋から始まっていまして、特に浅香唯と大西結花については、それまで鳴かず飛ばずだったのが、ドラマの放送開始以後のチャートがジャンプアップし、完全に番組人気と連動しているのがわかります。また、まだ歌手デビューしていなかった中村由真にとっては、ドラマによる認知の広がりが歌手デビューのきっかけとなったといっても間違いないでしょう。それだけこの『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』の存在は、 3人の無名の女の子にとって、運命を大きく変えてしまうほど大きなものだったはずです。

 

 そんな中で発売された『Remeber』の発売は19871014日、ドラマの最終回が同年1029日と、まさに最終回をもうすぐ迎えようという時期だったのです。主題歌は放送期間中に何回か変わっているのですが、そのトリを飾るのが3人で歌ったものということで、短期的な企画ユニットということを考えても、このタイミングだったのでしょうね。結果、オリコン1位をめでたく獲得となったわけです。特に中村由真、大西結花にとって、キャリアに於ける唯一のナンバー1シングルということになり、まさにスケバン刑事さまさまだったのです。

 

 作詞は安定した実績を残す湯川れい子、作曲は来生たかお。あら、これも来生たかおだったとは、知らなかったです。80年代半ばに多くのヒット曲をアイドルやアーティストに提供してきた来生たかおは、まさにこの時期は引く手数多だった絶頂期。ただこの『Remember』は来生たかお特有のくせがあまり感じられない作品だなとは思います。代表的な作品、たとえば中森明菜『スローモーション』『セカンド・ラブ』『トワイライト-夕暮れ便りー』、薬師丸ひろ子『セーラー服と機関銃』『語りつぐ愛に』、岡村孝子『はぐれそうな天使』、大橋純子『シルエット・ロマンス』、河合奈保子『疑問符』『ストロー・タッチの恋』、坂上香織『レースのカーディガン』、西村知美『夢色のメッセージ』『見えてますか、夢』、南野陽子『楽園のDoor』などがありますが、来生たかお独特の節回しを感じられる作品もこの中には数多くあります。

 

 湯川れい子の歌詞の内容は、最終回を意識したようなものになっています。1年間続いた番組も、そして3姉妹が揃うこともこれが最後、そんなちょっぴり悲しい曲です。ドラマ自体がけっして明るいドラマではなく、むしろ闇の社会を描いたような暗い感じが売りでしたし、ここでいきなりアイドルらしい元気で明るい歌を歌われても、浮いてしまうだけなので、まあこんな感じになるのが普通でしょうね。所詮短期の企画ユニット、しかも普段は個人で活躍している3人のアイドルが合体して歌うわけですから、あまり極端な色もつけにくかったでしょう。抽象的な詩で、あまり面白味のある歌ではないです。それでも1位を取ってしまうのは、やはり当時の番組と3(特に浅香唯)の人気があったからこそということでしょう。

 

 よく企画ユニットの場合、音源の発売だけで、テレビなどでは歌わないということ多いのですが、彼女たちは何度かテレビでも3人で歌っています。翌年には映画も公開されるなど、しばらくはドラマ人気の余韻が残っていたのですね。もっともその後さらに、浅香唯はアイドル四天王の一人として数えられるトップアイドルにまで昇り詰めるのですから、そういう点で『Remember』は踏み台ぐらいの感じでしょうか。ただ中村由真と大西結花にとっては、前述のように、この曲のおかげでオリコンナンバー1歌手となれたわけなので、本人たちにとっては、やはり大きな意味を持つ一曲であったことには違いないでしょう。