80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.44
SHOW ME 森川由加里
日本語詞 森浩美
作詞・作曲 A.Tripoli、T.Moran、A.Cabrera、B.Khozouri
編曲 船山基紀
発売 1987年10月
下町出身、ちゃきちゃきの江戸っ娘シンガーが歌う、人気ドラマの主題歌に起用された洋楽カバー曲
まずこの曲は、明石家さんまや大竹しのぶが出演して人気だった『男女7人夏物語』の続編である『男女7人秋物語』の主題歌であったということ、それがすべていっても過言ではないでしょう。『男女7人夏物語』の主題歌で石井明美が歌った『CHA-CHA-CHA』は大ヒットとなり、1986年のシングル年間1位にも輝きました。このヒットにより、それまで無名だった石井明美は毎週のようにテレビに登場するヒット歌手になり、まさにシンデレラガール的な存在になったのです。『SHOW ME』はその続編ドラマの主題歌ですし、しかも『CHA-CHA-CHA』と同様の洋楽カバー曲。最初からヒットは約束されたようなものだといっていいでしょう。そして石井明美の次のシンデレラガールの座を手に入れたのが、森川由加里だったのです。
そしてお約束どおり、森川由加里の2ndシングルであった『SHOW ME』も大ヒットし、オリコンチャートで週間1位を獲得するところとなりました。売上枚数も『CHA-CHA-CHA』の58.1万枚には及ばなかったものの、42.7万枚を記録、テレビの音楽番組にも当然のように呼ばれ、毎週のように歌を披露するようになったのです。テレビに彼女が出るようになると、彼女の下町出身らしいチャキチャキした話し方にもスポットが当たり、歌の雰囲気とのギャップが話題にもなったりしたものです。
この原曲はアメリカの女性3人組グループThe Cover Girlsのダンスナンバー。当時は日本でもユーロビートを中心としたダンス・ミュージックが受けていて、洋楽のダンスナンバーを日本語詞でカバーするということ、ひとつの流れになっていました。ですから『CHA-CHA-CAH』やこの『SHOW ME』がカバー曲として発売されるというのも、ある意味自然な流れで、あとは誰が歌うかということだけだったのです。逆に言うと、ある程度売り上げの見込めるカバー曲を、新人歌手に歌わせることで知名度をつけたり、或いは停滞気味の有名歌手に歌わせることで状況の打開を図ろうとしたり、そんな風にカバー曲を利用することもしていたわけです。さらにそこにドラマのタイアップがついて、いい場面で使われれば鬼に金棒だと、そういうことだったのです。
石井明美も森川由加里も、そんな新人歌手の一人であり、その中でも最も売出しに成功した新人歌手となったのです。当時、他にもBaBe、Winkといったところがこのパターンで成功しています。一方でイマイチ浸透しないで終わったケースも多数あるのですが、森川由加里の場合はドラマの力にも背中を押されたということでしょう。
日本語詞は森浩美が担当していますが、森浩美といえば、’90年代になってSMAPの多くの楽曲で作詞を務めていることが有名です。『青いイナズマ』『SHAKE』『ダイナマイト』『$10』『オリジナル・スマイル』『Can't Stop!! -LOVING-』…。’80年代においても、荻野目洋子『Dance Beatは夜明けまで』、浅香唯『DREAM POWER』、酒井法子『夢冒険』、シブがき隊『君を忘れない』などの実績を残していて、当時まさに赤丸急上昇中(古い!?)の作詞家といったところだったのです。そのほか同じ洋楽カバー曲の日本語詞としても早見優『ハートは戻らない』を手掛けています。ただカバー曲の場合、詩の内容そのものを重視することは少なく、基本は雰囲気と言葉重視となります。原曲の雰囲気に合っているのか、洋楽のメロディに違和感なくのっかるのか、あとはドラマのタイアップがあれば、ドラマの中でどう使われるか、そのあたりがクリアされれば十分。この曲も毎週のようにドラマの中の盛り上がるシーンで流れ、ヒットに結び付いていったわけです。
これによってヒット歌手の仲間入りを果たした森川由加里でしたが、その後はヒット曲に恵まれず、次の3rdシングル『IN YOUR EYES』は筒美京平作曲の和製ダンスナンバーでしたが、オリコン18位どまり。4thシングル『Hi! Hi! Hi!』は29位。これ以降はトップ100に入ることもなくなってしまいます。アイドルでもないし、自分で曲を作るでもないし、ボーカルも上手いには上手いのですが、ずば抜けた特徴があるわけでもなく、奇跡的に楽曲に恵まれない限り、歌手として売れ続けるということは難しかったということでしょう。むしろそのキャラクターを生かして、バラエティ番組やテレビドラマなどに起用されることの方が多かったです。そしてしばらく見ないなと思っていた頃に飛び込んできた驚きのニュースが、布施明との結婚でした。布施明のかつての配偶者がオリヴィア・ハッセーでしたから、あまりに対照的なキャラクターでしかも16歳差ということで、結構驚きがあったのを覚えています。でもそれまで独身をとおしていましたから、幸せになってよかったなというのはありましたね。