80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.39

 

Doubt!  麻田華子

作詞 川村真澄

作曲 都志見隆

編曲 西平彰

発売 19886

 

 

CMイメージモデルのコンテストでグランプリを獲得した童顔・幼声13歳の、浮き浮きと踊りだしたくなる2ndシングル

 

 1987年第2回東鳩オールレーズンプリンセスコンテストでグランプリを獲得し、その肩書を手に19882月、13歳で歌手デビューした麻田華子。この2ndシングル発売時点でも13歳という年齢でした。1980年代はまだ歌番組も多く、若い女性タレントを売り出すには、まず歌を出さなくちゃといった時代で、当然のように彼女もそのレールに乗っかるように、歌手デビューを果たしたわけです。その東鳩オールレーズンプリンセスコンテストは1991年までの全6回開催されたのですが、グランプリ獲得者に芸能界で大成した人はいないようです。ただ、麻田華子がグランプリを獲得した第2回の準優勝者の一人が水野美紀で、だんトツの出世頭のようです。

 

 麻田華子は13歳という年齢で、“若いというよりもまだ“幼いといった印象が強かったです。13歳としても童顔ですし、声も幼い感じで、いったいどこに向けて歌を売っていこうとしていたのか、アイドルとしての勝算はあったのか、傍目にはちょっと厳しいのではないかと思ってみていました。ただ歌唱力はわりとあって、声で損はしていましたが、それをうまく生かせればといったところはあったかもしれません。

 

 デビュー曲『好き♡嫌い』はオリコン最高12位と健闘します。ただこの曲、新人のアイドル歌手に歌わせるには、ちょっとトリッキーで、音符が予想しない方へ動いていくので、ちょっと覚えにくいし、何でこんな曲をデビュー曲にしたのだろうというところはありました。しかしこの2ndシングル『Doubt!』は弾むようなイントロから始まって、歌ったり聴いたりしていると、無意識に体を動かしたくなるような楽しい曲に仕上がっています。13歳、14歳の麻田華子の声と、年のわりに子供っぽい雰囲気を生かした、ぴったりの曲でした。

 

 作詞は当時作詞家として台頭してきた川村真澄。女性アイドルにもたくさん詩を提供していて、主なところでは、小川範子、河合その子、小泉今日子、松本伊代、宮沢りえ、渡辺満里奈、吉田真里子らに提供していましたし、アイドル以外でも久保田利伸、鶴久政治、今井美樹、和田アキ子、渡辺美里など幅広く作詞を担当しています。麻田華子はデビュー曲も作詞は川村真澄でしたので、もうそこは、安心して任せられるといった感じではなかったでしょうか。詩の内容も、よくある背伸びした大人っぽい詩を歌うのではなく、等身大の中学生の感覚で書かれているので、無理している感がまったくありません。何でも自分で経験して感じてみなければわからないじゃんっという、反抗期の心理を可愛らしく詩にしていて、このあたりはプロの仕事だなと思います。

 

 作曲の都志見隆も2曲続けての起用ですが、前作のへんてこりんなメロディーから離れ、今作は素直なメロディーに仕上げています。そして、それ以上にこの『Doubt!』はアレンジが素晴らしいです。とにかく聴いていて心地よいし、楽しいし、それでいてかっこよくて、何よりも彼女にあっています。編曲はデビュー曲から変更して西平彰が担当。詩と曲を変えなかった分、アレンジャーで変化をつけてきたというところですね。結果としてオリコン17位と、前作よりは下げてしまいましたが、それでもトップ20はキープし、今後の可能性を残した形になっています。

 

 ただ3rdシングル『魔法』がまたわかりにくい曲に逆戻りしてしまい、23位どまりとなると、4th『さよなら、DANCE5th1人でいいもん』は一気にランク外へ。シングルはこの5枚で活動を終了してしまいます。そしてその後はまさに波乱万丈の芸能人生を送ることになり、複数回にわたり改名したり、ヌード写真集を出したりと、13歳で童顔・幼声の頃を知っている者からすると、ちょっとびっくりの展開へ。その後は結婚して引退したようです。

 

下手な鉄砲数打ちゃ当たる的なアイドル乱発の時代でしたから、もし時代が違っていたら、別の売り出し方をしていたのでしょうね。そんな中で唯一麻田華子らしく、麻田華子の魅力をきちんと表現できたのがこの『Doubt!』であったと思い、今回取り上げてみました。