80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.27
激しい雨が THE MODS
作詞 森山達也
作曲 THE MODS
編曲 THE MODS
発売 1983年9月
日本においては一部のマニアックなファンのための音楽だったパンク・ロックを、初めて大衆に近づけた一曲
歌謡曲全盛の時代から、日本においてはマイナーでマニアックな存在であったパンク・ロックという音楽を、先頭に立って引っ張ってきたTHE MODS。その存在が初めて一般に広く知らしめるきっかけになったのが、この『激しい雨が』でした。当時マクセルのカセットのCMに起用されることで、多くの人の目と耳にとまり、オリコンチャートでも最高24位という、このジャンルとしては貴重なスマッシュ・ヒットへと繋がったわけです。テレビの音楽番組でも紹介されたりと、それまでこのジャンルになじみのなかった人たちにも、THE MODSという存在が知られると同時に、パンク・ロックという音楽自体が浸透し始める、まさに最初の動きとなったのが、この曲のヒットでした。
30年以上経った今聴いてもすごくかっこいい曲ですし、古さは全く感じませんが、それだけに当時としてはかなり新しい音楽といった印象はありました。そしてそれ以上に、彼らのとんがった容貌と怖そうな表情に、まだ十代だった私は、とっつきにくさを感じたのも事実です。1980年代前半という時代は、校内暴力とか暴走族とか、いわゆるツッパリたちや荒くれものが、わがもの顔に社会を席巻した時代、彼らの姿にそうしたツッパリ野郎の姿をだぶらせてしまうところはどうしてもあったのです。パンク・ロックは不良のやるものだと、まだまだそういった考えのある時代でしたので、チキンの私にはなかなか近寄りがたい音楽だったのです。
それにこの『激しい雨が』の歌詞自体も、ツッパリどもだったり、大人に反抗する若者たちが使いがちな単語が結構使われている印象で、《変わらない毎日にしがみつく人達》、《TVがただ騒さく響く》、《ガキの頃描いた夢》(このあたりは嶋大輔的)、《オイルの匂い》(こちらは横浜銀蠅のJohnny的》…、なかなかこちらからお近づきになれない感じではあったのです。メディアなどに登場する彼らの言動なんかも、今から見るといわゆる昔ながらのロッカーという雰囲気でしたし、そのとっつきにくさが音楽的な面での広がりを、もしかしたら多少なりとも疎外していたのかもしれません。ただ1980年代後半なると、パンク・ロックの中でもバリエーションが広がっていき、ついにTHE BLUE HEARTS、JUN SKY WALKER(S)といった大衆の心をがっちりつかんでセールスを伴うバンドが登場してくるわけで、そこへ繋ぐ流れとして、この曲が一段階上に押し上げた功績は、小さくなかったのではないでしょうか。
THE MODSの『激しい雨が』の次のシングルは『バラッドをお前に』でしたが、こちらはタイトル通り一転したスローな曲調となり、オリコンチャートは33位まで。この時代にそのすべてが一般に広く受け入れられるということは、難しかったようです。もっとも、中心メンバーである森山達也がソロ・シングルとして1985年にリリースした『Love,かくし色』は、カネボウ化粧品のCMに使われたこともあって、オリコン19位をマークします。バンドとしての順位を上回ることになったということに対し、どんな思いだったのかなと考えてみたりしますが、森山のソロ活動はこの年限定的なものだったようです。その後はまたバンドTHE MODSとして今に至るまで、走り続けることとなるのです。