80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.23

 

君にMerry Xmas  小田和正

作詞 小田和正

作曲 小田和正

編曲 小田和正

発売 198912

 

 

オフコースの解散した年、ソロ活動始動後第2弾としてリリースされた小田和正的クリスマスソング

 

 19892月をもって解散したオフコース。そしてこの年10月にリリースしたLittle Tokyoで本格的にソロ活動を始動させた小田和正。そこから約1か月半後、続けざまに発売したソロ始動後第2弾シングルがこの『君にMerry Xmas』です。オフコース時代にもソロシングルを発表したことはありましたが、その時はまだオフコースという母体が存在している時代。ソロとして成功させるには、まずはスタートダッシュということで、第3弾シングル『恋は大騒ぎ』まで、賞味4か月ちょっとの間に、一気に3枚をリリースしていくわけです。当時はまだ世間的にはオフコースの小田和正というイメージが強く、ソロでどこまでやれるかというのも未知数で、今ほどの絶対的な存在ではなかったような気がします。

 

 それれでも『Little Tokyo』はネスカフェ・ゴールドブレンドのCMに起用されたことで、多くの人の耳に留まることとなり、オリコン週間最高3位というヒットに繋がりました。そしてその直後の『君にMerry Xmas』は週間最高6位となったわけです。いかにも急いでリリースしたような感じはありますが、クリスマスシーズンが過ぎてから出しても間抜けになるだけですから、クリスマス・ソングで勝負をかけると決めた以上この時期になるのは必然ではあったのでしょう。ただこの年は、クリスマス・ソングのライバルが非常に多い年で、JUN SKY WALKER(S)『白いクリスマス』(1)、小室哲哉CHRISTMAS CHORUS(2)、山下達郎『クリスマス・イブ』(1)といった曲が、オリコンチャートの上位を賑わしていて、最も後発であった『君にMerry Xmas』には、やや分が悪かったかもしれません。

 

 それでもそうはいっても、あのオフコースの小田和正。『君にMerry Xmas』はそんなクリスマス・ソングの中の一つとして、小田和正ならではの綺麗で美しいメロディと声が、バブルで浮かれる街中に流れたわけです。クリスマス・ソングだけあって、静かでしみじみとした曲調にはなっていましたが、ただソロシンガーとして一気呵成に勝負をかけていくためには、やや地味で大人しい印象は否めなかったです。この年、どれか一曲クリスマス・ソングを買うなら、発売から6年経過してなおCMで流れることも多い山下達郎の『クリスマス・イブ』(発売は)か、人気絶頂のJUN SKY WALKER(S)を選択してしまう人が、普通に考えれば大部分でしょう。

 

詩の内容は、何らかの原因で恋人と喧嘩したままクリスマスを迎え、本当は会いたいくせに、素直に謝ることができない気持ちを歌っていますが、やっぱり地味ですね。クリスマスを一人で迎え、特に何するでなく、ただただ恋人のことをもんもんと思っているだけの詩には、まったくドラマを感じませんから、受けは悪いですよね。バブル絶頂期のクリスマスは、恋人とのロマンティックな夜を演出したり、みんなでド派手に遊んだり、そんなことをあちらこちらの雑誌・テレビで扇ぎたてていたわけで、むしろ一人寂しく過ごすクリスマスは隠しておきたいことだったのです。そんなこともあって、いまいちこの曲は大ヒットというわけにはいかなかったのでしょう。

 

しかしながら、その後1991年になって、小田和正は解散後のソロ4枚目のOh! Yeah!/ラブ・ストーリーは突然に』が社会的ブームになるほどの超ド級の大ヒットとなり、名実ともに日本の音楽シーンの大御所的な存在として、その地位を確立していくことになるのです。グループでも成功、ソロでも成功、それぞれで歌い継がれるような作品を残したというこは、やはり凄いことです。そして70歳を過ぎた今でも、美しハイトーンボイスが衰えないということは、まったくもって超人としかいいようがありません。おそらくその声を保つために、想像できないような節制をしているのではないかと想像はするのですが、とにかくソングライターとしてもシンガーとしても、他の誰にも代わりを務めることができない唯一無二の存在として輝き続ける姿には、恐れ入るばかりです。