80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.22

 

SAYONARAは言わないで  BEE PUBLIC

作詞 都志見隆

作曲 都志見隆

編曲 都志見隆

発売 198611

 

 

スマッシュヒットの勢いに乗ったイケメン4人組バントの、キャッチーで甘い第2弾シングル

 

 BEE PUBLICは、とにかく見てくれ重視で集められたイケメン4人で構成されたバンドですから、音楽性どうこうよりも、まずは知名度を上げてレコードを売る、そのことが第一の目的で作られたようなものです。作詞・作曲・編曲すべてを担当した都志見隆が、メンバーの選出から含めてプロデュースしたということですね。都志見隆といえば、多くの歌手・アーティストに楽曲を提供してきた音楽家であり、有名な作品としては、織田裕二『歌えなかったラヴ・ソング』、工藤静香Blue Rose、郷ひろみ『言えないよ』、近藤真彦『純情物語』、田原俊彦『ごめんよ涙』TOKIOLOVE YOU ONLY、中西保志『最後の雨』、中森明菜SAND BEIGE 砂漠へ』、光GENJI『地球をさがして』などなど、80年代後半以降多くのヒット曲を生み出しています。ですから、こうしたら売れるという音楽的な戦略を、きっと持ってこのバンドの売り出しを図ったには違いないでしょう。

 

 実際に、彼らのデビュー曲『お前にハート・ビート』(19868)TBS系ドラマ『夏・体験物語2』の挿入歌にも使われ、そこそこのヒットになりました。週間最高12位で、もうちょっとでトップ10入り、テレビの音楽番組に出演するなど、顔と名前を広げることには成功したように思います。ただ楽曲については、正直にいってあまり頭に残らない、どうということのない無味無臭のポップ・ロックといった印象で、都志見隆がこれを本当にやりたかったのか、首をかしげたくもなるものでした。それでもここまで売れたということは、ドラマの人気と積極的なプロデュース、そして彼らのルックから来るアイドル的な人気に因るところがやはり大きかったということですね。

 

 これなれば、もう少し楽曲をキャッチーなものに出来れば、さらにジャンプアップできるのではないかと、意気込んで(?)リリースしたのがこの2枚目シングル『SAYONARAは言わないで』だったのです。確かにこの曲、前作に比べて「おっ、なかなかいいじゃない」と思わせるような、いってしまえば「メロディアス」な作品になっていて、売れ線を狙ってきた感があったのです。そして詩の内容も、なんか甘っちょろいといいますか、毒にも棘にもならない言葉で、体よく別れを告げているわけなのですが、好きだけれど楽しかった夏の想い出は胸にしまって、新しい一歩を踏み出そう的な感じが、彼らのルックスにクラッと来てしまったファンをグッとさせるにはいいのじゃないかと。この路線は、3枚目シングル『二人のHappy Birthdayでも踏襲されるのですが、甘いメロディと甘い詩、そしてイケメンフェイスで、若い女性の心をがっちり掴んじゃおう的な戦略で堂々と挑んできたわけなのですね。実際、私もこれならそこそこ売れるのかな、なんて思ったりもしました。

 

 ところが、ものごとはそう上手くは運びませんでした。タイアップの力に頼ることができなくなると、この曲はオリコン最高24位と低迷、さらに3枚目『二人のHappy Birthday』は43位と惨敗。こうなってしまうと、バンドというものはいろいろとまとまらなくなるようで、例にもれず音楽性の違いだの、やりたいことができないだのと、メンバーが変わり、プロデューサーが変わりしていくわけですが、結局でデビュー時の華やかさからはますます遠ざかって行ってしまうのでした。

 

 やはり、音楽性でもなく、技術でもなく、顔で選んだというのが、ジリ貧になってしまった要因ではなかったでしょうか。アイドルとして売るならそれも結構なのですが、そうはいってもバンドです。コンセプトが明確でない上に、歌っている曲はアイドルソング的な甘い楽曲で、詩や曲も作家まかせ(それが悪いということではないですが…)。さらにハンディだったのは、歌がお世辞にもうまいとはいえなかったこと。バンドのボーカルですから、歌がいまいちだと、どうしても興ざめしてしまうところはあるのですよね。うまくなくても味があるとか、声が特徴的だとか、そういった個性があればまだ良かったのですが、歌はねえ…、正直、素人っぽさがありましたかね。