80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.19
LOVE SONG ツイスト
作詞 世良公則
作曲 世良公則
編曲 ツイスト
発売 1980年2月
70年代終盤に一世風靡した絶唱型ロックバンドが、80年になって新たな一面を披露した囁きのロック・バラード
ツイスト(当初は世良公則&ツイスト)は、基本的には70年代のバンドです。特に1977年にデビューして以降、出す曲出す曲すべてヒットし、6曲続けてオリコントップ10入り。テレビにもよく出演していたので、大人だけでなく子どもたちにも支持されるバンドとして、78年、79年を駆け抜けていきました。またこの1979年は他のバンドもヒット曲を多く放った年でもあり、ゴダイゴ、サザンオールスターズ、甲斐バンド、チューリップ等々ちょっとしたバンドブームの中、競うようにチャートを賑わしていたものです。その中で突入した1980年代、最初のシングル曲としてリリースしたのがこのLOVE SONGです。
ツイストといえば世良公則のハスキーボイスによる絶叫型ボーカルが特徴であって、そのボーカルを生かした男くさいハードなロックで、大衆の心を掴んだものです。それぞれの曲で印象的な絶唱フレーズを入れ込んで、強く印象に残すことで、ヒットに繋げてきました。♬あんたにあげた愛の日々を(『あんたのバラード』)、♬オイラは宿無しオマエには(『宿無し』)、♬Tonight Tonight…今夜こそオマエをおとしてみせる(『銃爪』)、♬燃えろいい女 燃えろ夏子(『燃えろいい女』)、♬wow oh… 耐え切れず(『性(サガ)』) などなど、とにかくワンフレーズでバシッと決めてくる技に長けていて、聴く方もそこに期待していた部分は大いにあります。ところがこの『LOVE SONG』はそれまでのイメージとは異なり、ボーカルも抑揚も抑え気味にした、ロック・バラードを出してきたのです。一味違うツイスト、一味違う世良公則で新たな一面をアピールし、可能性を広げていこう、そんな意図が透けて見えるようなシングル曲の選択ではありました。
確かに今までの曲と比べるとパッと耳に残るような印象的なフレーズはありませんし、囁くようなボーカルで、絶唱を期待すると肩透かしを食らうこともあったかもしれませんが、これはこれで味わい深いいい曲になっています。こんな曲も歌えるのか、これを新曲として聴いたときには、当時小学生の私でも思った記憶があります。ただ売れ線の曲かといわれると、必ずしも万人に受けるような曲ではなかったかもしれません。それでも当時の勢いからすると、またチャートを賑わしてくることになるのだろうとは思っていました。ところがこの曲、結果からすると、〈いまいち〉でした。7枚目のシングルで初めてオリコン週間トップ10から漏れる最高12位という結果。一方、テレビやラジオのランキング番組では10位以内に入ってくることもあって、CMにも起用されたりもしましたので、印象としては今まで程ではないけれど、そこそこはヒットしたというぐらいでしょうか。ただしヒット曲メーカーとしての雄姿は、ここまでとなってしまいました。
その後はヒット曲を出してチャートを賑わすこともなくなり、1981年に解散となってしまいました。何回かその後も再結成してはいるみたいですが、むしろ世良公則の個人としての活動の方が目立つようにはなり、それも歌手活動よりも俳優としてのキャリアが中心となる格好になっています。『太陽にほえろ』は俳優活動の成功を決定づけたドラマになりました。
さて前述の1979年に活躍したバンドですが、日本のトップバンドとして君臨し続けるサザンオールスターズを除くゴダイゴ、甲斐バンド、チューリップ、そしてツイストを除くと、それまでヒット曲を何曲も出していたにもかかわらず、1980年代に入った途端に、チャートを新曲が賑わすことがなくなってしまいます。1979年と1980年の間に大きな壁があるかのように、新しいバンドへと世代交代していくわけで、その意味でいうとこの『LOVE SONG』は年代の変わり目のバンド転換期を象徴する一曲ではなかったかと思うわけです。