80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.15

 

アバンチュールはルックスしだい  Sugar

作詞 古田喜昭

作曲 古田喜昭

編曲 平野融

発売 19824

 

 

サンバのイントロとお気楽なコーラス、彼氏の浮気現場を押さえた彼女のとった驚きの行動を歌った曲

 

 女性3人組の音楽ユニットSugarといえばデビュー曲の『ウェディング・ベル』なのですけれど、その次の2枚目にリリースしたこの『アバンチュールはルックスしだい』の方が、実は私は好きなのです。元カレの結婚式に招かれた女性の本音を歌った『ウェディング・ベル』も楽しかったし、実際に大ヒットしたわけなのですが、次のこの作品もまた、彼氏の浮気現場に遭遇した女の子の本音を歌ったシニカルで楽しい曲です。チャート的には週間最高20位と、続けてのヒットというわけにはいかなかったのですが、この曲にも他の歌い手さんにはない彼女たちの個性があふれています。

 

 他の女の子と一緒にいる彼氏を、この軽井沢で目撃してしまうという、悲惨な内容にもかかわらず、実に能天気な歌なのですよね、これが。いきなりサンバ風のイントロで始まり、♬パッパラッパッパ… という陽気なコーラス。そのまんま夏の避暑地に遊びに来ているような気分満開で始まり、冒頭で《トロピカルなカフェテラス》ですから、最初から浮かれモード。ところがその直後に、なぜか彼氏の声がしてふり向くと、(さらにこれもおそらく)アーパー女子大生と一緒にいるではないですか! さあ、どうする、私。ってな感じの歌なのですね。

 

この歌、二人に対しての軽薄そうなワードの使い方が上手くて、いかにも当時の浮かれ大学生のイメージがすぐに浮かんでくるのです。女には《ブローのきいたオレンジガール》《サーフィンの話には とりたてのピーマンじゃない》、彼氏には《真昼の性格うらやましい》《アセってる笑顔が チャウチャウ犬みたい》と、絶妙な言い方で、彼と彼と一緒にした女を罵るわけなのです。そしてこの主人公、転んでもただでは起きません。簡単には引き下がらず、デート中のふたりの前に立ち、ヒールの足で彼氏の足を踏んづけるのです。

 

うーむ、きっと『ウェディング・ベル』の主人公と同一なのではないでしょうか。もしかして、『ウェディング・ベル』の前日譚では?と思えるほど、行動パターンが酷似している主人公。そしてそう考えて、二つの歌詞を読んでみると、妙に納得してしまうのです。この一件をきっかけに、彼氏彼女の関係を解消した二人。そしてなんとこの彼氏は、あのオレンジガールとめでたく結婚! なぜか結婚式に招待されて一言《くたばっちまえアーメン》なんて考えすぎでしょうか。まあ、作詞者も同じ古田喜昭氏ですからね、あり得るかも。ちなみにこの古田喜昭氏、目立ったヒット曲の提供は『ウェディング・ベル』だけみたいです。

 

ところでSugarの魅力は独特の歌の世界もありますが、それにマッチしたメインボーカルであるミキのペチャっとした独特の可愛らしい声と、それに重ねるきれいなコーラスでしょう。抜群の声量と歌唱力で『ウェディング・ベル』や『アバンチュールはルックスしだい』を熱唱したって、はまるわけがありません。このミキさん、ルックス的にもそこそこ可愛らしく、そしてカメラへの目線の使い方がまた独特で、3人の中ではやはり目立つ存在でしたし、曲の雰囲気にも合っていました。そしてのこりの2人のクミとモーリが、わりと正統派のコーラスでハーモニーさせることで、オリジナリティを作り上げていたのです。曲がコミカルなので、あまりクローズアップされませんでしたが、3人のハーモニーはなかなかきれいでしたし、特に『ウェディング・ベル』は教会を舞台にしていることもあり、賛美歌的な雰囲気を表現することにも繋がり、ヒットの大きな要因になったのは間違いないでしょう。

 

その後、結局デビュー曲以上のヒットには恵まれず、5枚目では『ウェディング・ベルⅡ』(B面がこれまた『アバンチュールはルックスしだいⅡ』)なんて出したりしましたが、1985年のシングルをラストに解散。それぞれ個々に活動していたようですが、次にSugarの話題を耳にしたのは悲しいニュースでした。メンバーのモーリが29歳にて、死産の直後にご自身も死亡。結婚したばかりでのあまりに若すぎる死。当時、新聞の隅に小さな写真とともに記事が出ていたのを思い出しました。